ユーロは高いし宿代も高い。それでもカンヌへ行く理由

審査員賞を受賞直後のグザヴィエ・ドラン。実はこれが初受賞のゴダールはカンヌに来なかった。

 ようこそ、カンヌ映画祭へ!

 もう終わって1カ月経つけれど、もう少しおつきあいくださいませ。

 私がカンヌに行き始めたのは2004年。以来10年間通い続けているのだけれど、「なぜ?」ときかれることも多い。正直、最近のユーロ高はきついし、宿代も跳ね上がり続けているし(映画祭期間中は通常の3倍以上取る宿も!)、やりくりが大変。それでもなぜカンヌに行くのかと言えば、観たこともない映画が観たいから。

 もちろん、日本では1年におよそ500本もの新作が公開されるし、私も全部を観ているわけではないから、カンヌに行かなくても新しい映画は観られる。それでも観た限りで言うなら、似たような映画が少なくない。もちろん、定番の面白さというのもあるし、私もお約束の笑いなども好きなんだけれど、カンヌではやはり今までのどんな映画とも違う映画を観られる確率が高いのだ。そして残念なことに、日本ではカンヌで上映されるような世界の最前線を行く映画が公開されないケースも増えてきていて、やっぱりカンヌまで頑張って行くしかないのだ。

 斬新すぎて時として難解な作品もあるけれど、びっくりするような映画との出会いを思うと、純粋にワクワクする。古典的手法を取りながらも、あっと驚く演技などで驚かせてくれるものもある。どちらにせよ、新鮮な気持ちにさせてくれる映画が一気に観られる、それこそがカンヌが世界一の映画祭と言われる所以だと思う。

こんなテラスで取材をするのはカンヌならでは。奥にいるのは英国の名匠ケン・ローチ。彼の『ジミーズ・ホール』には泣かされた。

 もちろんコートダジュール(紺碧海岸)の海を眺めながらスターの取材が出来たり、美味しい南仏のロゼを飲めるのも、カンヌならではの醍醐味ではあるんだけど。彼らはお酒を片手に開放的な気分になっていろいろ話してくれたりする。今年もマチュー・アマルリックは白ワインを飲みながら実に愉快に話してくれたし、ケン・ローチには海を見ながらゆっくり話が聞けた。

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2014.07.20(日)
文・撮影=石津文子