驚くほど繊細な修復保存作業。その技術の高さに感動

 会場では、参考展示として大礼服の修復保存に用いられた技法や道具も紹介されています。トレインやボディスの修復を行ったのは、染織文化財の修復を手掛ける京都の株式会社染技連。損傷部分の色に合わせて染めた絹糸と伝統的な手打針を用いて裂地を補強したほか、刺繍の修復やスパンコールの留め直しなど、繊細な作業を続けました。

 また、ボディスについては、立体保存をするためのトルソー(アーカイバルマウント)を製作。アメリカのロサンゼルス・カウンティ美術館がボディスを採寸して型紙を作製しています。

 国内外の高い技術を集め、精緻な作業によってここまで成し遂げられた修復保存プロジェクト。美術品修復士を主人公にした『コンサバター』というシリーズ小説を書き続けている一色さんは、こうした資料の展示や修復工程の映像が非常に興味深かったといいます。

「修復って、時の流れとの戦いでもあると思います。しかも、人の寿命よりも遥かに長いスパンで、物事を見通さなければならない。その点、西洋式のドレスには、それ専用の保存形式があることなどを知ることができて勉強になりました。130年余り前のドレスが、修復によって劣化や損傷から守られ、今も美しく存在し続けている。あまりに自然に輝いているので気がつきにくいけれど、修復士や研究者のみなさんの情熱によって磨かれているからこその賜物。そのことを知ったうえで見ると、より一層美しいドレスに映りますね」

2024.04.26(金)
文=張替裕子
写真=杉山秀樹