戦争が始まったら、みんな戦争に向かって、思いが一緒くただったかと言えば、そうじゃない。戦争の『良い悪い』をドラマの中では言いませんが、同じ時代に戦争に巻き込まれながらも、いろんな人のいろんな思いがあった。そんなところが出せればな、と。それが『ブギウギ』らしいのではないかなと考えました」

 

「みんなそれぞれに、思いも事情も違う」というのは、このドラマがずっと大切にしてきたテーマだと言える。梅吉(柳葉敏郎)、六郎、アホのおっちゃん(岡部たかし)、ゴンベエ(宇野祥平)、小田島(水澤紳吾)など、「“枠”からはみ出した人たち」を見捨てない優しい視線が『ブギウギ』には貫かれていた。

「その部分は脚本の足立さんと櫻井さんがとてもこだわって、目指したところです。私もそこにとても共感しました。せっかくドラマだし、フィクションなんだから、そういう世界があってもいいのではないかと。偉いか偉くないか、裕福か裕福じゃないかが幸せの基準ではないということを、台詞ではないところで描きたいという思いがありました」

「ズキズキ」とは何か?

 最後に、スズ子の代表曲「東京ブギウギ」の歌詞であり、このドラマでたびたび言及されてきた「ズキズキ」とは何かと聞いてみた。

「『痛みを伴うところから生まれるもの』とでも言いましょうか。ドラマの制作現場もズキズキすることのほうが多いですしね(笑)。『スズ子は生きている』そして『歌う』ということの象徴でもあると思います。物語の最後に、スズ子が歌手を辞めるエピソードを持ってきて、スズ子のズキズキワクワクの『歌手人生』を描き切りたいと思いました。やはり、スズ子が歌を辞めるところがいちばん葛藤するし、ズキズキするところだと思いましたので」

 最終週を前に、『ブギウギ』を見てきた視聴者に言いたいことは。

「半年間ご覧くださり、本当にありがとうございます。好きなように見て、好きなように楽しんで、感じていただければと思います。見ていただいた方それぞれの感想が、正解だと思っております。本当は『皆さんの心に残る朝ドラになれたら……』みたいなことを言ったほうがいいのでしょうけれど。あまりこういうところで、うまいこと言えないんですよね、私(笑)」

2024.03.30(土)
文=佐野華英