「マガデミー賞」の誕生秘話は――。

 今年度も大きな盛り上がりを見せた「マガデミー賞」。本賞がどのようにして生まれたのか、マガデミー賞事務局で統括を務めるBookLiveの堰合さんにお話しを伺いました。

――数あるマンガ賞の中でも、特徴的な「マガデミー賞」ですが、賞が生まれたきっかけや経緯についてお聞かせください。

 「2020年に総合電子書籍ストア『ブックライブ』がサービス開始10周年を迎えた際に、これまで出版・マンガ業界を盛り上げてくれたキャラクターたちに、手紙という形で感謝を伝えるメッセージ広告を掲出したところ、大きな反響をいただいたことがありました。

 マンガのキャラクターが私達の心に寄り添ってくれる存在であることを私達が改めて実感したことに加え、近年、”推し活”の高まりに見られるように、マンガのキャラクターから日々の活力をもらっている人がたくさんいることも分かったので、キャラクターへの感謝を伝える機会を定常的に設けることで業界全体を盛り上げていこう、という思いから『キャラクターを讃える賞』として創設しました」

――確かに、年々、マンガ作品のキャラクターの影響力の高まりは感じますよね。賞の回数を重ねることでの変化はありますか?

「回を重ねるごとに、ノミネートや受賞された作品の作家さんや関係者の方から喜びのコメントをいただく機会も増えました。少しずつ認知が広がり、賞に価値を感じていただいているのが伝わってきて嬉しいです」

――運営する上で、難しい点や大変な点はありますか?

「『マガデミー賞』は、まず一般の方々に推薦応募いただき、それをもとにノミネート発表、そこからさらに書店の審査員と特別審査員のハナコさんと一緒に審査会を行い、受賞キャラクターと作品を決定します。

 推薦時にいただいた一般の方々のコメントをX(旧:Twitter)や公式サイトに掲載していますが、皆さんのキャラクターへの愛と熱量が凄まじく、全部チェックするのが大変だったという嬉しい悲鳴も。

 また、書店員をはじめとする審査員も皆さん想いが強く、審査会は毎年(というか年々)白熱しています。私は審査会で進行役を務めていまして、皆さんの熱い思いを汲んでちゃんと審査員全員が納得できる形で受賞者を決定できるか、毎年ハラハラしながら進行しています。

 ですが、熱い議論も審査員のマンガ愛の強さ故ですし、議論の中で毎回新しい着眼点や発見があるので審査会はとても面白いです。審査員の皆さんも、もちろん対象作品を拝読のうえ審査会に参加いただいているので、日々の業務の中で作品をチェックするのは大変だったと思います」

――BookLiveでは、「年間ランキング」や「電子書籍で読みたいマンガ大賞」など他にも賞も発表されています。「マガデミー賞」は、どのような点が違うとお感じですか?

 「大きな違いは『マガデミー賞』はキャラクターを軸にしたアワードであるという点ですが、それ以外だと、『年間ランキング』は、当社が運営する電子書店『ブックライブ』のその年の売上に基づいたもので、『電子書籍で読みたいマンガ大賞』はブックライブ書店員が最も面白いと思った作品に贈る賞であるのに対し、『マガデミー賞』は読者がキャラクターを推薦し、ブックライブ書店員だけでなく他店の書店員さんにも審査に加わっていただき、最終的に受賞を決定するので、『みんなで決める』という側面が強い賞になります」

 「だからこそ、『マガデミー賞』はその年ごとに支持されるキャラクターの傾向が少しずつ違ってくることに気づきました。例えば主演男優賞だけ見ても、1回目は『これまで自分になかった、新しい気付きを与えてくれる』存在として久能整さん(『ミステリと言う勿れ』)、2回目は『夢に向かってひたむきに努力する姿を讃えたい』として宮本大さん(『BLUE GIANT EXPLORER』)が受賞されましたが、今回は『親しい人との関係を大事にし、他人を思いやる姿を応援したい』と、紬凛太郎さん(『薫る花は凛と咲く』)が受賞されました。

 2023年は、未来よりも『今この場所』に目を配り、まだ見ぬ出会いよりも『身近にあるリアルな人間関係』を大切にしようとするキャラクターが支持されているのだと思います」

――ありがとうございました! 気が早いようですが、次回の開催を楽しみに、また一年たくさんの作品を読み込みたいと思います!

「マガデミー賞2023」特設サイト

https://booklive.jp/magademy-award

2024.03.15(金)
文=CREA編集部
撮影=深野未季