ちょうど年齢的に大学を卒業する頃で、みんなはこれから大人の階段をのぼっていくなか、自分たちはグループとしてどこまで行けるんだろうっていう不安が芽生えていました。

3人が抱いていた、「個人の人生を充実させたい」という思い

――グループでの活動を一時休止してソロで活動し、またグループで活動することもできたのかなと思いますが、あの当時は、そういう考えはなかったのでしょうか。

伊藤 当時はなかったですね。将来について考える中、グループでの活動よりも、個人としての人生を充実させていきたいというひとりひとりの気持ちのほうが、強かったんだと思います。

 3人とも芸能界に入って、キャンディーズではない個人としての世界も作っていきたかったんですけど、忙しすぎて実際にはできなかった。そういう不安も解散につながったのかなと思います。

 でも、周りは「なぜ、解散なの?」という声のほうが多かったので、そういうのを耳にすると、「いけないことをしてしまったのかな」「間違ったことをしてしまったのかな」という思いが頭をよぎることもありました。

――後楽園球場でのファイナルカーニバルの最後の曲は、「つばさ」でした。ラストソングは、早い段階で決まっていたのですか。

伊藤 決まっていましたね。あの曲が今の自分たちの気持ちを表していて、最後に一番ふさわしい曲だと思いましたし、ひとりひとりが次に向かっていける曲でしたので。あとは、やっぱりファンの方への感謝の気持ちを込めて、という思いもありました。

 

「怖さもありました」芸能界復帰時に感じていた不安

 キャンディーズ解散後の80年2月、蘭さんは約2年ぶりに芸能界復帰を果たす。だが、歌の世界ではなく、女優としてリスタートを切った。この時、蘭さんは、「怖さ」を感じていたという。解散したのに、なぜ芸能界に戻って来たのか。今の時代ならSNSでいろんな声が飛び交っただろうが、当時もそういう声が聞こえてきた。

2024.03.24(日)
文=佐藤 俊