「PHOENIX LAB. PROJECT」に三條場氏が加わった理由

──「PHOENIX LAB. PROJECT」メンバーの中で女性はひとり。しかも、一番若いですが、参加に至った経緯をお教えいただけますか?

三條場 前職のBEAMSも含めて、これまではプレスやPRのお仕事に関わることが多かったんです。でも、いざ自分のブランドを立ち上げて、ファッション業界の人間として服を売っていくことをあらためて考えたときに、生産現場を知らないままではいけないと思いました。

 そんなときに「PHOENIX LAB. PROJECT」のPRのお話をいただきました。これまで携わってきたお仕事とは違って、SDGsのことや、海外の工場のことなど、新たに学ばないといけないことは多かったんですが、ファッション業界の裏側というか中身を深く知ることができるチャンスかもしれないと感じたんです。

 これまでのお仕事とは違う、新しいチャレンジではありましたが、やると決めたらやるタイプなので。これを機に一皮むけたらいいな、という思いで参加を決めました。

──では、メンバー全員で行かれたバングラデシュ視察旅行も楽しみにしていらしたんですか。

三條場 いえ、実は、暑いのが大の苦手なんです。プライベートでは、夏になるとあまり出かけなくなるくらい。英語もあまり話せないので、それまで海外旅行で行った国も限られていました。だから、バングラデシュに行くことが決まったときは、家族が驚いていました。「大丈夫なの?」って。

 実際、バングラデシュの空港に着いた時点でカルチャーショックが大きくて。夜10時くらいだったんですが、これまで行ったことのあるハワイや韓国とは違い過ぎて、降り立った瞬間に「怖い、どうしよう」と思いました。綺麗な免税店もないし、聞こえてくる言葉も全然わからないし……。

 でも、ホテルにチェックインしてから、一気にテンションが上がりました。コンシェルジュの方が本当に優しくて。私のつたない英語でも、何を言いたいのか察しながら優しく聞いてくださったんです。バングラデシュの人が優しいという情報は事前に知っていたので、本当だったんだ、と実感しました。

 そうやって考えてみると、自分が不安になっていたのは、トイレが汚かったらどうしようとか、暑さは大丈夫かなとか、身のまわりが整っていなかったら嫌だなというだけで。それ以外の部分にフォーカスしてみたら、初めて見る景色ばかりで、どんどん興味が湧いてきました。

 メンバーの皆さんの仲が良くて、移動中もずっと喋っていたのも楽しかったです。バングラデシュの人たちと付き合いが長い、株式会社わんピースの山口社長が、現地の習慣や考え方について色々話してくれました。山口社長はエネルギー溢れる人で、バングラデシュ人スタッフの結婚式に出席するくらい現地に馴染んでいるので、言葉の一つひとつに説得力があって、聞いていると感情が揺さぶられるんです。

 山口社長の話を聞いたり、現地でインタビューをしたりするうちに、最初はどこか他人事に感じていたバングラデシュの人たちの暮らしを、もっと知りたいと思うようになりました。

 ちゃんと英語を話せるようになりたい、直接コミュニケーションを取れるようになりたいとも。バングラデシュへ行く前は、まさか自分がそんな風に考えるようになるとは1ミリも思っていなかったので、自分自身の変化に驚きました。

バングラデシュで見た、今も忘れられない夕暮れの景色

──バングラデシュでは、何が一番印象に残っていますか。

三條場 一番感情が揺さぶられた瞬間のことは、よく覚えています。皮革工場の見学後、夕日を写真に撮った瞬間でした。皮革工場って匂いも結構きつくて、日本の日常生活ではちょっと経験しない厳しい環境なんですね。そういう場所へ実際に行って、その環境で働く人たちを目の前で見て来た直後に、凄く綺麗な夕日が現れたんです。

 ちょうど日本の帰宅ラッシュに当たる時間だったらしく、西日が街並みを照らす中、仕事を終えたバングラデシュの人たちが家に帰って行く。その風景が神秘的で綺麗だな、SNS映えするなと思って写真を撮りました。

 プレスやPRは、美しいものや可愛いものを見極めて発信する仕事です。これまでのキャリアを通じてビジュアルの美しさを伝えることにこだわって来ましたし、それが私の強みでもあります。なので、その写真を撮ること自体はいつも通りのことだったんです。でも、その瞬間、後ろめたさのようなものを感じました。

 家路を急ぐ人たちの中には、先ほどの皮革工場のような厳しい環境で働いていたり、もしかすると今日食べるものに困っていたりする人もいるかもしれない。それなのに、反射的に映えると感じた自分って何なのだろう、と。それまでは、ひとつの美しい景色として捉えていたものの中に一人ひとりの人生があることを実感して、感情が高ぶりました。今でもそのときのことを思い出すと自然と涙が出ます。それがどういう感情なのか、自分でも上手く言い表せないんですけど。

 あまりにも初めての感情だったので、夕日の写真を投稿することが良いのかどうか、葛藤しました。でも、山口社長が「そういう気持ちも含めて日本の人に伝えるために来ているんだから、そのまま伝えればいい、自分を責めなくていいと思います」と言ってくれて。それが、心に刺さりました。

 ありがたいことに、私は発信できる環境にいてフォロワーさんが受け取ってくださる。じゃあ、自分の目で見て感じたことをしっかり伝えなくちゃと思いました。自分のやるべきことが腑に落ちたというか、気持ちの持って行く場ができた瞬間でした。

──バングラデシュに行く前と後で、変わったことはありますか。

三條場 簡単に手に入る情報だけを信頼しないように、気を付けるようになりました。実際に自分が経験して得た情報の価値や重さを実感したというか。今は何でも簡単に検索できるし、それをすぐ信じてしまいそうになるけど、それは100%真実ではないと常に頭の片隅に置くようにしています。

 あとは、またバングラデシュに行きたいと思うようになりました。これはもう、家族からめちゃくちゃ驚かれています。

 でも、元々バックパッカーをしていたり、バングラデシュをよく知っていたりする人間が発信するより、私みたいにこれまでバングラデシュに行ったことがなかった人間が発信した方が聞いてもらえることもあると思うんです。

 私は、ペットボトル飲料は普通に買うし、SDGsにのっとって毎日生活しているわけでもない。そういうところはあまりよくないとは思うんですけど、一方で日本社会の一般的な感覚に近いところもあると思うので。だからこそ、色々な人に伝えやすい立場にいるんじゃないかなって。そういう姿勢を持ち続けながら、もう一度バングラデシュに行ってみたいです。


 yoshiokubo × SMASELLコラボレーションによるプロダクトは、ECストアで予約販売中。実物を手に取って見ることができるポップアップストアにも注目したい。

PHOENIX LAB. PROJECT

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阪急うめだ本店

開催期間 2023年10月11日(水)~17日(火)
所在地 大阪市北区角田町8番7号 阪急百貨店 3階 SOMETHING GOOD STUDIO

三條場夏海

20代女性から絶大な支持を得るファッションディレクター。大学卒業後に入社したBEAMSでは販売職とプレスを経験した後、旗艦ブランド「JOIÉVE(ジョエブ)」を立ち上げ、プレスとディレクターを兼任。2022年に独立し、ファッションブランド「Gajess(ガジェス)」をスタート。

2023.09.23(土)
文=松山あれい
撮影=平松市聖