ファッション業界で活躍する、個性豊かな5名が立ち上げた「PHOENIX LAB. PROJECT」。緻密な刺繍で彩られた「yoshiokubo」の服を、驚きの価格で手に入れることができるかも? なぜこの企画が生まれたのか、プロジェクト誕生の秘密に迫ります。


20年以上のキャリアを持つ「yoshiokubo」デザイナーが挑む、異色のコラボ

 中目黒の迷路のように入り組んだ路地の先にある、「yoshiokubo」のアトリエ。世界的ファッションデザイナーへのインタビューを前にちょっと緊張していると、そのご本人、久保嘉男氏が軽やかに現れた。

「あ、すみません、待たせちゃいました?」

 待ち合わせ時刻よりも前だったのでひたすら恐縮するが、久保氏は変わらない調子で、どうぞ奥へと案内してくれた。

 今期のyoshiokuboの服の一部にはフェザーが使われている。まるでその羽毛のように軽やかな人だ。なるほど。世界を相手にする人とは、こうもフラットなものなのかと思いながらアトリエに足を踏み入れる。

 2023年、久保氏の新しい挑戦は、ファッションの廃棄に取り組むアウトレットモール「SMASELL(スマセル)」とのコラボレーションによって始まった。

 そこで今回は、SMASELLを運営する株式会社ウィファブリック代表の福屋 剛氏と久保氏のおふたりに詳しい話を伺うことにした。

yoshiokubo × SMASELLによるバングラデシュと日本を繋ぐプロジェクト始動

──早速ですが、今回のプロジェクトの概要について教えていただけますか。

福屋氏(以下敬称略) SMASELLは、アパレルメーカーのアウトレット在庫を預かり、一般ユーザーに手頃な価格で販売するオンラインアウトレットモールです。根底にあるのは、「アパレル業界の廃棄を減らすことで、ファッションをもっと楽しく持続可能なものにしたい」という思い。

 時代の流れもあって、「日本中小企業大賞 2022」にて二度目の「SDGs賞 最優秀賞」を受賞するなど、社会的にも評価いただくことが増えてきました。

 「PHOENIX LAB. PROJECT」として始めた今回のプロジェクトは、さらに一歩踏み込み、廃棄予定のキャンセル品を買い取ってリメイクし、アップサイクルすることで付加価値を与えて販売する試みです。

──PHOENIX LAB. PROJECTのメンバーは、株式会社ウィファブリック代表の福屋 剛氏、yoshiokuboデザイナーの久保 嘉男氏、株式会社わんピース代表の山口悠介氏、ブランド「Gajess」を立ち上げたインフルエンサーの三條場夏海氏、そしてファッションブランドのPRを手がける株式会社RADIMO代表の近藤昌平氏の5名。とても個性豊かなメンバーですが、どんな経緯でプロジェクトが立ち上がったんでしょうか。

福屋 今年2月頃、バングラデシュに生産拠点を持つアパレル企業、株式会社わんピースの山口社長からバングラデシュの近況を聞いたところからすべて始まりました。

 新型コロナウイルスのパンデミック後、世界第2位の衣料品輸出国であるバングラデシュではアパレル大手企業から大量のキャンセルが出ました。その額は3,000億円に達するとも言われています。アパレル製造業はバングラデシュの主要産業。その輸出がストップするということは、膨大な数の失業者と大量のキャンセル在庫が生まれるということです。そして、買取先が見つからない場合、その在庫はそのままゴミの山になります。状況を調べながら、このダメージは日本の私たちの想像を超えるだろうと感じました。

 これはファッションの廃棄を減らすSMASELLを運営する者として、どうにかしなきゃという危機感を覚えるとともに、在庫を買い取って現地労働者の技術で再加工することで雇用の創出ができるのではないかと考えました。そのときに思い浮かんだのが、今年1月にお会いしていた久保さんの顔だったんです。何かご一緒できたらいいねという話をしていたので、早速連絡を取りました。

久保氏(以下敬称略) 福屋社長とは年明けに対談をしていたんですよね。福屋社長は、初めて会ったときにyoshiokuboの服のファンだと話していました。でも、実はそのときは信じていなかったんですよ。また調子良いことを言って……、くらいに思っていました。そうしたら、たまたま見かけたメディアで本当にyoshiokuboの服を着ているのが映っていて。それで、この人のことは信用できるなと思ったんです。

 また、福屋社長の周りにはどんどん面白い企画が集まってくるところを見ていたので、この人は持ってるな、一緒に面白いことができそうだな、という期待感も生まれていました。

福屋 久保さんに連絡してからは、早かったですね。山口社長からバングラデシュの新しい情報が入るとLINEで共有して、どんどん話が進んで、ユニセックス服のリメイクをするという骨子が固まったんです。

 そのときに、ユーザー層に近いインフルエンサーである三條場さんに声をかけました。ユーザー層と離れた30代、40代の男性だけでこのプロジェクトを進めるのはどうかと思って。同じタイミングで近藤社長にも参加してもらいました。

2023.09.15(金)
文=松山あれい
撮影=平松市聖