ギャップのある光景を第三者の目で見る視点

――監督の映画には、尋常じゃない人間観察力を感じます。たとえば、『さんかく』で田畑智子さん演じるヒロインが自分を「『アメリ』みたい」と言っていても、観客にはその行為がストーカーにしか見えないとか。そういう視点はどこから養われているのですか?

 俺自身が勘違いしますからね(笑)。たとえば、女のコと2年前にご飯食べに行ったとして、男はそのことを鮮明に覚えているけど、女からすれば「行ったっけ?」ぐらいでしかないことってありますよね。そんなギャップのある光景を第三者の目で見ると、かなり痛々しい。だから、俺の映画って、映画館でみんなが笑っているところで、1人だけ泣けてきてもおかしくないと思うんですよ。確かに人間観察するのも好きで、いろいろな人から話を聞くことで、そういう冷静な目線が養われてきたと思うけど、やっぱり自虐の部分もあると思う(笑)。後は子供の頃から、「もしも話」が好きな妄想っ子でしたから。

――それに、暇さえあれば、いろんなことに挑戦している。そんなバイタリティに溢れた日常が作品に大きく影響しているかと思われます。今、新たにやってみたいことはあるんですか?

 自分がやったことがないことを紙に書いて、それを大・中・小にグループ分けしているんですよ。小は「スカイツリーに登る」とか「新商品を食べる」とか本当に些細なことで、大だと「オーロラを見に行く」「スイスのジュネーブ郊外にあるセルン(素粒子物理学の研究機関)の見学に行く」とか。それを1個ずつ潰していくことを、どこか義務化しているんですよ。休みの日には「今日はどれを潰せるか?」という感じ。あと、良く知らない人と海外旅行に行くとか、バツゲーム的なことも面白いですね(笑)。

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2013.12.21(土)
text:Hibiki Kurei
photographs:Mami Yamada