極楽浄土はここにある。平等院鳳凰堂の飛天たち

国宝 雲中供養菩薩像 南1 平安時代 天喜元年(1053) 京都・平等院蔵(会期全日展示)

 現在、半世紀ぶりとなる大修理が行われている鳳凰堂は1053年、藤原道長の子・頼通が、庭園も含めた敷地・建物全体で極楽浄土を再現した、藤原ファミリー用の「テーマパーク」。もともとは5人の娘を宮中に送り、3代の天皇の外戚として位人臣を極めた平安時代随一のパワーエリート、道長の別荘だったものを、頼通が死後の極楽往生を願って私寺にあらため、平等院と号した。

 浄土テーマパークの中心は、阿弥陀如来像を安置し、翼を広げた鳳凰にも喩えられる阿弥陀堂だ。「極楽いぶかしくば、宇治の御寺をうやまえ(極楽浄土の存在を疑うなら、平等院にお参りしなさい)」と謳われた堂内は、阿弥陀如来像の周囲の壁に、雲に乗りながらさまざまな楽器を奏する「雲中供養菩薩」の木彫像たちを配し、本尊の光背に飛天像を取りつけ、周囲の柱や扉には極楽の風景の中で踊る菩薩像を描くなど、飛天のイメージに溢れている。

 今回の展示のクライマックスとなるのが、この鳳凰堂の飛天像たちだ。姿態も持つ楽器もさまざまな「雲中供養菩薩像」14躯(国宝)、さらに寺外初公開となる本尊の光背に取りつけられた「阿弥陀如来坐像光背飛天」(国宝)を中心に、地中海のほとりからガンダーラを経て、東の果ての島へ舞い降りた飛天の表現が、この日本で時間をかけて成熟し、「仏像荘厳古今無双」と讃えられるほどに豪奢な形で結実した姿を、存分に堪能することができる。

平等院鳳凰堂平成修理完成記念 天上の舞 飛天の美
URL www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2013_5
会場 サントリー美術館
会期 2013年11月23日(土・祝)~2014年1月13日(月・祝) ※期間中展示替えあり
休館日 火曜日 ※2013年12月30日(月)~2014年1月1日(水)は休館、2014年1月7日(火)は開館
入館料 一般1300円ほか
電話番号 03-3479-8600

橋本麻里

橋本麻里 (はしもと まり)
日本美術を主な領域とするライター、エディター。明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。近著に幻冬舎新書『日本の国宝100』。共著に『恋する春画』(とんぼの本、新潮社)。

Column

橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」

古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。

2013.12.14(土)