ミラノでは毎年4月に「ミラノサローネ」という世界最大級の家具見本市が開催され、同時期に市内の様々な場所で行われる一連のデザインイベント「フオリサローネ」と相まって、街中はお祭り騒ぎで盛り上がるが…。


 今年は4年ぶりに照明の見本市「エウロルーチェ」も開催されたため、業界全体が照明に注目する年となった。そんな中、スペイン・バレンシア州の老舗ポーセリンブランド、「リヤドロ」が創業70周年を記念してビッグネームとコラボした照明を発表。

幻想的な「MOKUREN」は日本の深津直人とのコラボ作品

 まずは、深澤直人とコラボした「MOKUREN」。深澤といえば、日本では「無印良品」のデザインアドバイザーや「マルニ木工」のアートディレクターとして知られているが、イタリアの有名ブランドにも多くの作品を提供し、「ミラノサローネ」の売れっ子デザイナーの一人だ。

 そんな深澤が「リヤドロ」のためにデザインしたシャンデリアがこの「MOKUREN」。白木蓮にインスパイアされ、白磁の質感や特質と結び付けた作品で、「リヤドロ」の本質的要素である自然と クラフツマンシップに、 デザインを見事に融合させている。

 深澤はこれまでも機能性とミニマリズム、工業生産と工芸の融合を常に大事にしてきたが、同作品も「リヤドロ」の工房で熟練した職人がすべて手作業で制作し、伝統とモダンがミックスされた作品だ。LEDライトの光が半透明のポーセリンの花を透過して優しい光を放ち、ブラックラッカー仕上げのアルミニウムが複雑かつ詩的に木蓮の枝を表現する。

 深澤は「木蓮の花を見ると、自然界に突如として何かが起こったような印象を受ける」と言い、この作品は「点灯するとその静謐な存在感を際立たせる心地よい癒しのサプライズ」なのだとか。

2023.06.16(金)
文=田中美貴
編集=関谷麻美