新しい料理技法を取り入れたコース料理

アミューズは透明なポテトチップ。お好みでチューブのチーズを絞り出して塗って

 さて、私がうかがった際のコースをご紹介しましょう(コースは季節がわりです)。

 1品目は透明なポテトチップで、歯磨き粉のようなチューブとグラスとともに登場します。チューブにはブルーチーズが入っているので、お好みでポテトチップに絞り出していただきます。一方、グラスの中身はトリュフ風味のコンソメスープ。このスープが本格的で味わい深くて感心するのですが、グラスの上にはビールのエスプーマ(泡)がのっています。ビールとポテトチップ。アメリカンなリラックス感の演出がにくいですね。座布団1枚!

2皿目の前菜。アイスプラントとライムキャビアのプチプチした食感が楽しい

 ガラスの瓶に入った2品目は、蓋を開けると白い煙が立ち上ります。中に入っているのはこの煙で燻製されたばかりのサーモンとゴボウのピュレ、そしてキャビアのような食感でライムの味がする「ライムキャビア」と、アイスプラント。サーモンとライムとゴボウを取り合わせるあたりに、フランス料理でもイタリア料理でもなく、アメリカ的なセンスが光ります。そしてライムキャビアとアイスプラントの弾けるようなプチプチ感が楽しい! ライムキャビアはオーストラリア原産の柑橘類で、親指くらいの皮の中に粒粒の果実が詰まっているそう。ライムの酸味が濃縮したような味です。座布団2枚!

3皿目の前菜。野菜エキスでできた3色のジュレに、ブッラータ(チーズ)とカブ、ビーフジャーキーを添えて

 3品目は、赤、透明、黄色の3色のテリーヌです。ゼリーのようななめらかな食感で、赤と黄色はパプリカ、透明はトマトの味がします。付け合わせはとろりとしたブッラータチーズ(イタリアのフレッシュチーズ)とカブ、ビーフジャーキーです。主素材が味も食感も軽い分、付け合わせがしっかりしていてバランスよし。いやはや、脱帽です。

4皿目の前菜。皿の左からフォアグラのソテー、レモンピール、栗のセミフレッド。手前はブラックオリーブのソース、奥はエスプレット(バスク産唐辛子)

 4品目はフォアグラのソテーと栗のセミフレッド(冷菓)の温度差がステキ。真ん中のレモンピールとともに味わうと爽やかですが、手前のブラックオリーブや奥の唐辛子を付けて食べると、味わいに別の表情が生まれます。いろいろ味わえて大満足。

5皿目は野菜料理。フレッシュポルチーニに竹炭のソースを添えて

 5品目のフレッシュポルチーニのソテーは、目の前に運ばれるや否や、香りにうっとり。こんなに美味しいポルチーニに出会えてラッキー! とテンションが上がります。ポルチーニの上の泡はマルサラ酒とタイムでつくられたもの。その泡のすっきりした香りがポルチーニと相まって、清々しい森の空気を思わせます。お皿の黒い線は竹炭を練り込んだアイオリソース。これもポルチーニとよく合います。メニュー名は「Oui are the Champignons」と「We are the Champion」をもじった、貫禄のあるシャンピニオン料理でした。

<次のページ> 東京にいながらにして海外旅行気分も!?

2013.12.10(火)