「自己を省みるとはこういうことなのか、と深く考えさせられる上にそこに紡がれている物語もとても面白くて一気に読みました」。文筆家・ひらりささんの新刊エッセイ『それでも女をやっていく』に、こう感想を寄せて帯を綴ったのはドラマプロデューサーの佐野亜裕美さん。10歳ほど離れた親しい友人関係であり、ともに「ほとんど男子校な世界」の東京大学出身という2人は、「女」を取り巻くラベルを見つめ直す作業を実生活でどう実践し、作品と向き合ってきたのだろうか。

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セクハラ、パワハラ発言への悩み

――佐野さんがプロデューサーを務めたドラマ『エルピス』のあるセリフについて、ひらりささんから意見を伝える機会があったと伺いました。おふたりは、いつ頃からお知り合いなんでしょうか。

ひらりさ 数年前ですね。佐野さんのご自宅でボーイズラブについての勉強会というか、何人かで集まって話すという会があったんです。大好きだったドラマ『カルテット』のプロデューサーの方のご自宅に、“BLに詳しい人”という枠で呼んでいただくことになるとは思いませんでした(笑)。『おっさんずラブ』が盛り上がりつつある時期だったんです。

佐野 2018年の夏とかそれくらいかな。うちにはよく友人が遊びに来てくれるんですが、BLの現在地を知りたいと思っていた時期に、広めに声をかけて。私は直接知り合いではなかったんですけど、友人がりささんを呼んでくれて初めてお会いしました。

ひらりさ 新刊にも書きましたが、私は昨年1年間、ロンドンの大学院にあるGender, Media & Cultureというコースで、フェミニズムの観点からメディア論を学んでいました。でも実はその下見として、2019年冬に1カ月の語学留学をしていたんですね。そのことをFacebookで投稿したところ、亜裕美さんが「ちょっと話を聞かせてほしい」と。その後、たしかロサンゼルスに行かれましたよね。

2023.03.28(火)
文=ひらりさ、佐野亜裕美
撮影=平松市聖/文藝春秋