「ベラスケス頌:選ばれし幽閉者」2013年(一部:「大きな画像を見る」で全体をご覧いただけます)
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 ある時はマリリン・モンローに、またある時はゴッホの自画像やフェルメールの人物画、セザンヌの静物画に。現代美術作家の森村泰昌が、泰西名画の画中人物(時には静物=リンゴにさえも!)に扮し、さらに背景すべてをセットとして作り込んだ上で撮影、その写真を作品として発表する〈美術史の娘〉シリーズが初めてまとまった形で発表されたのは、1990年、佐賀町エキジビット・スペースで開催された個展でのことだ。

 それから23年、かつて森村が扮したマルガリータ王女の登場する作品としてより有名な、そして多くの謎に満ちた、ベラスケス畢生の大作《ラス・メニーナス(女官たち)》が、再び森村によって「演じられる」日がやってきた。資生堂ギャラリーで開催中の「LAS MENINAS RENACEN DE NOCHE 森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る」で展開される、美術史、そしてセルフポートレートという2つのテーマは、森村にとって作品制作の基調をなす重要なものだ。その2つの極を往復する中で、画家自身が絵の中に登場する《ラス・メニーナス》は、いずれ何らかの形で取り組みたいと、90年の個展の頃から考えていたという。

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2013.10.12(土)