20歳までには何かを成し遂げていたかった

――表現することや、人前に立つことには抵抗はないタイプだったんですか?

 5歳からダンスを習っていましたし、抵抗は無かったです。無いというよりもむしろ人前に出ることが好きで、学芸会で『オズの魔法使い』をやった時も、ドロシーから魔女まで女子が応募できる役は全部オーディションを受けたりなんかしていました(笑)。

――その頃から、役者であったり俳優というものになりたいという意識はあったんですか?

 演じたい、というよりも、もう少しイノセントな感じですかね。目立ちたい、とか人と違っていたいみたいな自意識の現れというか。役者になりたいと考え出したのは20歳ぐらいからですね。

 私、大学2年生の時は何をやってもうまくいかないというか、悩んでいたんです。美大に入ったはいいけれど、自分が何をしていいのか、何をするべきなのかがわからない。演劇舞踊コースに所属をして勉強しているけど「演技とは何か」とか、私は何もわからないんじゃないか、って怖くなってしまって。

 大学に入ると、同級生の中にはこれまでずっと演劇をやっていましたという子がいたり、自分で劇団を立ち上げている子や、何度も舞台を踏んでいる子がいたりするんですよ。そんな子たちと横並びで私がやっていけるのかなって、何とかしなきゃと悩んでいました。

 それに、表現力があったり面白かったりする人というのは、20歳までには何かを成し遂げていたり、少なくとも兆しのようなものがあるはずだ、とちょっと強迫観念のように感じていたんです。でも私は何もできていない。その頃からオーディションを受けたりするようになっていました。

ガトリングガンをぶっ放すシーンは是非観てほしいです

――その結果、園 子温監督の『愛なき森で叫べ』のオーディションに合格したんですね。そこでの演技も園さんに評価されて、映画2作目にして今作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』になったわけですが、ハリウッドはいかがでした?

 基本的にはハリウッドだからといってそんなに大きく変わることは無かったです。どちらかというとやっぱり園さんの現場だな、という感じの方が強くて。

 海外のスタッフの方が多くて現場で英語が飛び交っていたりとか、クランクアップの後にニコラス・ケイジさんにハグしていただいたぐらい(笑)。指示を出す人は園さんですし、カメラマンも谷川さん。『愛なき森で叫べ』でご一緒していたので、そんなに違和感なく撮影には臨めました。

――スージーという役でご出演されていますが、演じていて意識したことや印象に残っているシーンを教えてください。

 今回の作品は異世界が舞台の物語なので、この濃い世界観の中、スージーというキャラクターをどれだけ立ち上げられるかというのは意識していました。台本を読んだ時、彼女は赤ちゃんのような人間だなと思って。純粋でありながら無垢。その一方で無垢であるが故の無知や愚かさ、勢いみたいなものをしっかりと表現したいなと思って演じました。

 印象に残っているのはガトリングガンをぶっ放すシーンですね。実はあのシーン4,5回撮り直ししていて。初めて触るガトリングガンを使って、感情のままに乱射するというのがなかなかしっくりこなくて。スージーらしい、エネルギーがあるシーンでありながら緊張感のあるカットでもあったので、是非劇場で観てほしいですね。

2021.10.08(金)
撮影=松井良寛
文=CREA編集部