豊臣家の残党狩りを、周囲の助けで辛くも生き延びた

重要文化財 松鷹図襖 狩野山楽筆 京都・大覚寺
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 という顛末は、「400年近く画壇を支配! 華麗なる狩野一族の大プロジェクト」の回にも書いたが、この時、まさに切り捨てられそうになったのが、豊臣家についた狩野山楽だ。山楽は狩野家の血縁ではなく、弟子として永徳の仕事を長く支えた。もともと秀吉に仕える武士だったが、秀吉がその絵の才能を目に留め、永徳の下に送り込んだという。永徳の死後に気宇の壮大さ、明るく溌剌とした気分など、永徳のDNAを受け継ぐ絵を描けたのは、山楽1人だったが、徳川方による豊臣家の残党狩りで追われることになった。周囲の助けで辛くも生き延び、宗家が江戸に上った後は、京狩野家の初代として、桃山の遺風を感じさせる作品を描いた。

重要文化財 紅梅図襖 狩野山楽筆 京都・大覚寺
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 山楽の後を継いだのは、かつての山楽同様、外様の弟子ながら腕を見込まれて山楽の娘を娶り、家督を継いだ狩野山雪である。伊藤若冲や曾我蕭白など、この後に登場するいわゆる「奇想の画家たち」が影響を受けたのではないか、と言われる奇矯な形態感覚や、手の込んだ工芸的な技法で、濃厚で特異な絵画世界を作り上げた。

群仙図襖 狩野山雪筆 アメリカ・ミネアポリス美術館
Minneapolis Institute of Arts, The Putnam Dana McMillan Fund, 67.37.1-.4
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 山楽展は42年ぶり、山雪展は27年ぶりで、両者を同時に紹介するのは初めてとなる「狩野山楽・山雪」展。永徳最晩年の《檜図屏風》に酷似した構図の山楽《松鷹図襖》や、天まで突き抜けよとばかり伸びる紅梅の老木を描いた山楽《紅梅図襖》、かつてひとつの襖の裏表を飾る絵だったものが離れ離れとなって海外へわたり、今回約50年ぶりに、展覧会で再会することになったミネアポリス美術館の山雪《群仙図襖》と、メトロポリタン美術館の山雪《老梅図襖》。力士たちの躍動する姿や、それを見守る人々の興奮が描かれた、異色の山雪作品《武家相撲絵巻》、そして展覧会への出品は22年ぶりとなる天球院所蔵の山雪/山楽《梅花遊禽図襖》など、山楽21件、山雪58件、両者による作品4件、合わせて83件によって、永徳、探幽だけではない京狩野家の個性と表現力を、存分に味わうことができる。

老梅図襖 狩野山雪筆 アメリカ・メトロポリタン美術館
The Metropolitan Museum of Art, The Harry G.C. Packard Collection of Asian Art, Gift of Harry G. C. Packard and Purchase, Fletcher, Rogers, Harris Brisbane Dick, and Louis V Bell Funds; Joseph Pulitzer Bequest, and The Annenberg Fund Inc. Gift, 1975.(1975.268.48a-d)Image (c)The Metropolitan Museum of Art.
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特別展覧会「狩野山楽・山雪」
会場 京都国立博物館
会期 3月30日~5月12日
休館日 月曜日 ※ただし4月29日(月)は開館、翌30日(火)休館。5月6日は開館
開館時間 9:30~18:00(入館は閉館30分前まで) ※ただし会期中の毎週金曜日は20:00まで(入館は19:30まで)
料金 一般1400円
問い合わせ先 075-525-2473(ハローダイヤル)

橋本麻里

橋本麻里(はしもと まり)
日本美術を主な領域とするライター、エディター。明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。近著に幻冬舎新書『日本の国宝100』。共著に『恋する春画』(とんぼの本、新潮社)。

Column

橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」

古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。

2013.03.23(土)