山間の小さな町に、色鮮やかな伝統衣装をまとい、ゆるやかな暮らしを営んでいる人々がいる。日本の昔話とどこか通じる、ピースフルな光景に出会いに、ハノイから夜行列車に乗った。
険しい地形に守られた隠れ里
ベトナムの山岳地方、サパに興味をもったきっかけは、サンデーマーケットの一枚の写真。野菜や日用雑貨を売る屋台が並び、人々、バイク、水牛でごった返す市場の賑わいが切り取られていた。
目を引いたのは、そこにいる少数民族の女性たち。誰もが手仕事の美しいカラフルな衣服や帽子、アクセサリーで着飾っている。伝統衣装が、特別な日のためのものではない暮らし。見てみたい!
ハノイの北西約350キロ、中国との国境に近いラオカイ省にあるサパ。この国の最高峰ファンシーパン山を含むホアン・リエン・ソン山脈の、標高約1,600メートルに築かれた小さな町だ。
険しい地形が幸いして、ベトナム主流のキン族に脅かされることなく、モン族やザオ族、タイ族など、おもに5つの山岳少数民族が、慣習を守りながら暮らしている。
1880年代にはフランス人が避暑地としてこの地を見出し、どこかヨーロッパの山リゾートを思わせる佇まいもある。
まずは丘の上から町を一望
サパの中心地から行きやすいハイキング・スポット「ハムロンの丘」。整備されたコースには巨石の間を抜ける小道や桃の林、なぜか十二支の像やヤギ小屋などが配置され、どこかテーマパークのよう。
「天国の入口1」のコースを登っていくと、展望台に出る。
海抜1,800メートルから見下ろすサパの町は、緑色をたたえたサパ湖や、山小屋風のカラフルな建物が密集し、まるでジオラマを見ているよう。
ちなみに、“ハムロン”とは“龍の口”という意味があり、パワースポットでもある。
2019.02.24(日)
文・撮影=古関千恵子