■星のや軽井沢 (後篇)

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 国内のみならず海外に至るまで、さまざまなロケーションに魅力的な施設を展開する星野リゾート。その星野リゾートが、今、特に力を入れているのが「ウェルネス」です。

 この連載では、バラエティに富んだアクティビティ、そしてオーガニックな食事などが楽しめる、ヘルスコンシャスなステイを各地からご紹介します。


クマの爪痕に自然を学ぶ
ネイチャーウォッチング

  「星のや軽井沢」の前身、「星野温泉旅館」が開業したのは大正3年。その頃から守られている雄大な自然は、このリゾートの宝物でもある。

 軽井沢の自然というと、涼しげな夏をイメージするけれど、冬にだって、いや、冬だからこそ楽しめるアウトドアアクティビティも事欠かない。

 エコツーリズムの専門家集団「ピッキオ」が案内する森を歩けば、冬の軽井沢の魅力にはまってしまうだろう。

 通年行われている「野鳥の森ネイチャーウォッチング」は、木の葉が落ちて見通しがよくなり、雪の上に足跡がつく冬こそ、野生動物を見つける絶好のチャンスなのだ。

 歩くのは、「星のや軽井沢」に隣接する「軽井沢野鳥の森」。浅間山麓の広大なエリアのなか、約3キロにわたって歩きやすい散策路が整備されている。暖かな服装と歩きやすい靴があれば、特別な装備は要らない。

 この森と「星のや軽井沢」の関係はとても深い。

 自然を愛した歌人の中西悟堂が1930年代から一帯を「日本三大野鳥生息地」と呼び、星野温泉(現・星野リゾート)の2代目経営者、星野嘉助とともに野鳥の保護活動に尽力したことから、1974年に国設野鳥の森が誕生したという。

 ここは野鳥だけではなく、ほかの動物たちにとってもパラダイスだ。

 森を歩いていて見つけるのは、動物たちが歩いた痕跡が伺える獣道や、カエルが冬眠する池、そしてツキノワグマの爪痕が残る木の幹も。え? この森、クマがいるの?!

 「これは豊かな森であることの象徴。大型動物が暮らしているということは、小型動物もたくさんいる証です。貴重な野生動物であるクマを傷つけず、人の安全も守りつつ、共存することが大切なんですよ」と、ネイチャーガイドの森孝之さん。

 別荘が増え、人と野生動物たちの暮らすエリアが重なっている軽井沢では、人の生活する場にクマが出没する可能性もある。

 両者の共存をめざし、クマに発信器をつけるなどの調査活動を行っている「ピッキオ」の頼もしいパートナーが、アジアで初のクマ対策犬、ベアドッグだ。

 大きな声で吠えてクマを森の奥に返したり、匂いでクマの移動経路を特定したりなどして、調査中のスタッフの安全を確保してくれるのだそう。

 そんな初めて聞くエピソードは、知るほどに面白い。

2018.12.30(日)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵