デザインのコンセプトは
「グラマラスを再び機内に」
2018年5月29日、日付変更線の西にあるオーストラリアのシドニーから、西へ西へと夜が明けていく地球の動きを追うように、デルタ航空のフライトに次々と新風が吹き込まれていった。
最後の地はアメリカのハワイ州ホノルル。全世界の約6万4,000人の客室乗務員、空港の地上職員、整備部門などの従業員が、新ユニフォームの着用を開始したのだ。
新デザインのコンセプトは「グラマラスを再び機内に」。
デザイン決定までには3年が費やされた。従業員対象のフォーカスグループ調査を100回以上実施。さらに3万件を超えるアンケートから改善点を導き出し、170カ所あまりの改善を重ねた。検討されたデザインは2,000点にも及んだという。客室乗務員や空港の地上職員は12年ぶり、整備部門などは18年ぶりの刷新となった。
デザインを担当したのはザック・ポーゼン氏。ニューヨークを拠点に活躍するファッションデザイナーだ。
職人的なクラフツマンシップや身体構造を重視したデザインで知られ、普段着からスーツ、レッドカーペット用のイブニングウェアまで幅広く手がけている。そのデザインは、女優のユマ・サーマンや、ミシェル・オバマ元米国大統領夫人なども愛用。「ブルックス ブラザース」のクリエイティブディレクターも務めている。
女性客室乗務員のユニフォームは、飛行機の流線型にインスピレーションを得たというペプラムジャケット(裾がフレアになったジャケット)や、襟元に飛行機の翼をデザインしたブラウスやワンピース、スカーフを合わせるVネックのワンピース、パンツスーツなど、各自が選んで着用している。どのデザインも、ユニフォームというよりおしゃれ着のような美しいフォルムだ。
男性は深いグレーのスリーピースで、機能的でありながらダンディなデザインとなっている。
新しいメインカラーは、アメリカのパスポートの色からインスピレーションを得たという深い紫色。アメリカ系航空会社で広く採用されてきた紺色と赤色から脱却し、深紅、深いグレー、グレイッシュな藍色、アザミ色といった色使いで洗練させた魅力を加えた。
デルタ航空の赤いロゴ「ウィジェット」は、ボタンやスカーフ、ポケットチーフなどにアクセントとしてあしらわれている。
ザック・ポーゼン氏がデザインしたユニフォームを製作したのは、アメリカのアパレルメーカー「ランズエンド」。同じくアメリカのデュポン社と共同開発したストレッチ素材を使用。天然繊維を使用した4ウェイストレッチ素材が、ユニフォームとしての動きやすさと耐久性を実現している。
デルタ航空の次の旅では、ぜひ新ユニフォームに注目してほしい。空港や機内で何種類のユニフォームに遭遇できるか、旅の楽しみがひとつ増えるはず。
デルタ航空
2018.08.31(金)
文=たかせ藍沙