俳優人生を決めた一本の予告編

――さて、デビュー作となった映画『仮面学園』は準主演でしたが、それによりプレッシャーのようなものはありませんでしたか?

 ろくにお芝居もできないのに、大きな役でデビューしてしまったため、その後、いろんな方からダメ出しされるようになったんです。それに地元の仲間と遊べなくなったこともあって、ストレスから「自分には役者は向いてない。いつでも辞めてやる」と思うようになりました。そんなとき、友達と映画を見に行って、本編が始まる前に北村龍平監督の『VERSUS』の予告編が流れたんです。当時は自分のなかで、日本のアクション映画で面白い作品はないと勝手に決め付けていたんですが、そのなかで展開される、ものスゴいチャンバラを見たことで、大きなショックを受けて……。その日から「北村監督に会うまでは、役者は辞められないな」と思うようになったんです。

――北村監督といえば、後に『あずみ』で組むわけですが、どのようなかたちで実現したんですか?

 事務所の人から「今度、『あずみ』という北村監督の新作のオーディションがあるけど、受けてみるか?」と言われたんです。そのときは『あずみ』に出たいというより、監督に会いたい思いでいっぱいでしたね。それで、面接会場で、監督に「ファンなんです」と握手を求めたら、「お前出る?」とトントン拍子で話が決まって、“ながら”という役をいただくことができました。

――そういう意味では、『あずみ』が役者としての転機になった作品ですよね。

『あずみ』のテーマって「生きること、死ぬこと」なんですよ。ちょうど、そのころ友人が亡くなったり、自分が交通事故に遭ったりして、そのテーマをリアルに感じられたんです。それを機に芝居の楽しさとか、自分の持っていることを表現するということを初めて理解できたんです。だから、今でもこの作品と北村監督には感謝していますね。

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2012.04.06(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Miki Fukano