銀座の星付き名店が
バリにもお目見え

夜のしじまに浮かび上がる「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」。ランタンなどの照明が効果的だ。ディナーだけの営業。

 バリ島はリゾートラヴァーたちの楽園である。あまたあるハイエンドなホテルの頂点に君臨するのが「ブルガリ リゾート バリ」だ。ここでの滞在は敷地内だけでコンプリートする。それほどヴィラと施設の充実は際立っているのである。

 2017年5月4日、このゴージャス極まりないリゾートに、さらに新しい魅力が加わった。ミシュランスターを保持する東京・銀座のイタリアン・レストラン「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」がバリ島にもオープンしたのである。

2009年秋より「ブルガリ イル・リストランテ」のエグゼクティブシェフを務めるルカ・ファンティン氏。

 北イタリアのトレヴィーゾに生まれたルカ・ファンティン氏は、2009年から東京・銀座の旗艦店「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」を拠点にして活躍している。

 その経歴は華々しい。2000年に料理専門学校を卒業すると、ミラノの名店「クラッコ」を皮切りに、スペイン、サン・セバスチャンの泣く子も黙る「アケラレ」や「ムガリッツ」など、イタリア内外の世界トップクラスのレストランで研鑽を積んだ。

 2006年には、ローマの名店として名高い3ツ星レストラン「ラ・ペルゴラ」の副料理長に就任したというから、それだけでもいかに“凄腕”かが知れるだろう。

 2011年には、日本におけるイタリア人シェフとして、唯一のミシュランスターを付与され、それを保持しつづけている。

 イタリア料理のガイドブック「イデンティタ・ゴローゼ2015」によって、「最優秀シェフ賞」を受賞。2016年11月には、イタリア本国ではバイブルとされるレストランガイドを発行するガンベロ・ロッソ社により、「トップ イタリアン レストラン2017」を受賞した。

 2009年、東京に着任したファンティン氏は、食材を求めて、日本の津々浦々へと足を運んだという。彼に必要だったのは、日本の食材で、新しいイタリア料理を創造することだった。いわば、イタリア料理の新しい解釈とも言えるだろう。

 高名なイタリアの料理評論家のアンドレア・ペトリーニ氏は、ファンティン氏の料理をこう評する。

「ファンティンの料理は、繊細な風味を控えめに用いることから、完全にイタリア的であり、かつ日本的だといえます。研ぎ澄まされたミニマリズムで感動を与え、コンテンポラリーであると同時にタイムレスでもあります。彼は、食材を使って調理する以上のことをしています。味覚と審美眼について彼が受けた教育と、その記憶を呼び覚ます痕跡との深いつながりを創り出しているのです」

2017.06.28(水)
文=文藝春秋 増刊・ムック編集部