BOOKS INTERVIEW 本の本音

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オスカー・ワイルドに真剣勝負を挑んだ
原田マハの『サロメ』

ワイルドとビアズリーに
手向けた花のつもりで書きました

今月のオススメ本
『サロメ』 原田マハ

21世紀のロンドンで、未発表の『サロメ』の原画が発見される。妖女サロメが口づけようとしている男の生首。その有名な絵に描かれている男の顔は、未発表版では違っていた。物語は、19世紀末のロンドンへ。ワイルドとビアズリーの出会いの裏には、ひとりの女性の存在があった。本文に“暗転”を挿入する演出が、衝撃度を高める。
原田マハ 文藝春秋 1,400円

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 『楽園のカンヴァス』ではルソーの最晩年の絵画〈夢〉、『暗幕のゲルニカ』ではピカソの代表作〈ゲルニカ〉を題材に採り、アート小説の可能性を切り開いてきた原田マハ。最新作では、オスカー・ワイルドの〈サロメ〉に真剣勝負を挑んだ。この戯曲に挿絵を描き下ろした画家ビアズリーこそ、「真の作者」ではないか? たった一度きり、奇跡のコラボレーションが成立した背景を探る。

「一言で表現するなら、ワイルドとビアズリーの一騎打ちの話です。この2人がどうやって出会い、『サロメ』において互いの才能をどんなふうにスパークさせ、やがて離れていくことになったのか。例えば日本の少女漫画は、ビアズリーの作品からものすごい影響を受けています。他にもファッション、音楽、演劇、文学……私たちが触れている文化全般に『サロメ』のインパクトは今も息づいている。ワイルドとビアズリーの出会いがなかったら、歴史が大きく変わったと言っても過言ではないんですよ」

 愛憎渦巻く2人のドラマには、19世紀末のロンドン、という舞台がよく似合う。

「現代社会はあらゆる抑圧のロックが外れていますが、この頃は社会的なタブーがたくさんありました。それを『サロメ』は犯したとされていますが、でもね、そのやり方は非常にエレガントなんですよ。ビアズリーとワイルドが体現している“エレガントな退廃”の美しさを、文章の中から決して消さないよう気をつけました」

 「天才」を表現するためには、すぐ傍で彼らを見つめる「凡人」の視線が欲しい。膨大な資料の中から、ビアズリーの姉であり舞台女優だったメイベルの存在に注目し、彼女を語り部にすることを決めた。

「ビアズリーが25歳の若さで亡くなった時も、傍にいて介抱していたそうなんです。“あまりにも仲が良くて近親相姦も疑われた”という一文を資料で見つけ、男色だったワイルドとは違うかたちで、エロスを描くことができるのではと思いました」

 だが、ワイルドとビアズリー、両者と渡り合える人物が「凡人」であるはずはなかった。もっとも大量の空想を注ぎ込んだこの人物の存在が、この小説を前人未踏の場所へと導いていったのだ。

「ワイルドとビアズリーに手向けた花のつもりで、この小説を書きました。『サロメ』について描いた話ではなく、原田マハ版『サロメ』として読んでいただければ嬉しいです」

(C)森 栄喜

原田マハ(はらだまは)
1962年東京都生まれ。ニューヨーク近代美術館に勤務後、2003年に執筆活動を開始。12年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞受賞。

<この記事の掲載号>

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2017.03.20(月)

文=吉田大助

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