トルコのソウルフードを贅沢に!
スターシェフが開いた「グルメ・ドネルケバブ」店

ドネルケバブをラップサンドにした、ドネル・ドゥルム。

 トルコのファストフードといえば、まっさきに頭に浮かぶのがドネルケバブだろう。ラワシュと呼ばれる平たいパン生地に、ジューシーなドネルケバブの肉と野菜をのせクルクル巻いてかぶりつく……。ドネルケバブのラップサンド、ドゥルムは、昔からトルコ人にこよなく愛されているお手軽ランチアイテムだ。

 今では日本でも市民権を勝ち取りつつあるといっても過言ではないだろうし、トルコ人が多く住むドイツでは、すでにファストフードとしてはハンバーガーを押しのけて一番人気にのし上がっているという。

トルコブルーのタイルがかわいい「BASTA!」店内は、案外こぢんまりしたアットホームなスペース。

 そんななか、トルコ料理研究家の大濱裕美さんもおススメのドネルケバブ店がある。イスタンブールのアジア側中心地、カドゥキョイエリアにある「BASTA! STREET FOOD BAR」だ。

 立ち上げたのは、人気のファインダイニング「Nicole」の元シェフ、カーン・サカリヤと、フランスのアンスティテュ・ポール・ボキューズ卒業後ミシュラン・シェフの下で働いていたデリン・アルバシュというゴールデンコンビである。

カーン・サカリヤは、トルコでミシュランの星に最も近いシェフの1人として名高い。

 こんなにレベルの高いシェフたちがなぜドネルケバブ店を……? そんな質問について、カーン・サカリヤは地元メディアの取材にこう答えている。

「高級レストランだと、みんな特別な時にしか来てくれない。だけど自分は、シェフの手が入った料理ながらも、日常的に気楽に食べに来てもらえるような、ガストロノミックなストリートフードがやりたかったんだ。もっと広い層の、多くの人たちにアプローチできるようにね」

屋外にもテーブル席が並んでいる。外国人客も多い。

 こうして立ち上がったBASTA!では、本当に上質なシェフによる手の込んだドネルケバブ料理がラップサンドの形でお手軽に食べられる。

 例えば人気メニューのひとつ、子羊肉のドゥルムは、胸上部肉を85度で8時間、真空調理法でじっくり調理しているという。これにザクロソースが入ったスモーク玉ねぎが合わせられており、肉のほっこりしたやわらか感としっかりした味付けのソースがドゥルムにぴったり。

 さらに一番人気だというカブルガ(牛ロース)のドゥルムも、やはり7~8時間の調理後スモークした牛肉に特製マスタードソースがかけられていて、もはやドネルケバブの域を超越するグルメな一品に仕上がっている。

牛肉のドゥルム(左)と、子羊肉のドネルケバブ(右)。肉も美味しければ、和えてあるソースも抜群なので、あっという間に食べられる。これでひとつ19トルコリラ(約580円)。

文・撮影=安尾亜紀