パタゴニアの経営哲学を綴った本の題名は?

朝の駐車場で知り合い同士、波情報の交換。

 ワシントンヤシで縁取られた海辺の駐車場は、朝と夕方、サーファーの車で賑わいます。

 SUVやセダンからボードをするすると取り出し、顔見知り同士で会話を交わしながら海へ入る準備をする彼ら。夏でも水温が低い海域なのでウェットスーツはフルスーツ、しかもみんな黒いゴム製なのが、いかにも硬派な感じです。

ダウンタウンから少し離れたパタゴニア本社。本来は営業中のはずが……。

 アウトドア用品のトップブランド、パタゴニアの本社があるのも、ベンチュラのダウンタウンから少し離れた場所です。世界各地に展開しているパタゴニアですが、小さなベンチュラの本社に企画から宣伝、縫製工場までを集約。敷地内には前身の掘っ立て小屋のようなウェアハウスも残されています。

パタゴニアの前身である、シュイナード・イクイップメント社の名残が敷地内に。

 登山家のための用具からスタートし、スノーボードやサーフィン、トレイルランニングなどへ発展。自然を相手にするスポーツ分野の企業として、環境保護や地域貢献の意識が高く、製品を通してその重要性を伝え、売上から環境保護団体への寄付を行い、還元していく。“言うは易し、行うは難し”な企業理念を実践している会社です。

 パタゴニアを訪れたのは、金曜日の夕方。ホームページに掲載されている営業時間内なのに、なぜか会社はがらんと無人状態。後でパタゴニアの創業者が経営論を綴った本が『社員をサーフィンに行かせよう』というタイトルであることを知り、「さては……」と納得した次第です。

2016.09.10(土)
文・撮影=古関千恵子