マレー半島とボルネオ島北部にまたがる常夏の国、マレーシア。実はこの国、知る人ぞ知る美食の国なのです。そこでこの連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。多様な文化が融け合い、食べた人みんなを笑顔にする、とっておきのマレーシアごはんに出会えますよ。

“喉が痛いときは、これを飲むべし”
マレーシアの黒いジュース

 「旦那に喉が痛いと伝えたら、車に乗せられて外出。向かった先は、病院でも薬局でもなく、町のドリンクスタンド。“これ”と真顔で差し出した旦那の手には、世にも奇妙な真っ黒なジュースがあったんです……」とは、マレーシア人のご主人と現地で暮らす友人の話。

クアラルンプールのチャイナタウンにあるドリンクスタンド。水槽のような大きな透明のケースのなかで、真っ黒の液体がちゃぷちゃぷと揺れている。

 このようにマレーシアの飲みものは、一見すると、ぎょっとする色のものがたくさんあります。コーヒーをさらに濃くしたような黒色、いちごミルクを彷彿させる目の覚めるようなピンク、春の芝生のような爽やかな緑色など、その外見からは、味の想像がまったくつきません。

 でもこれらの色には、ちゃんと意味があるのです。材料を煮出すことで黒くなったり、お祝いの意味をこめて華やかな色をつけたり。なかには、友人がご主人からもらったような、喉のイガイガに効くといわれる漢方ドリンクもあります。どれも見た目は強烈ですが、飲んでみると、あぁ~なるほどね~と思う、日本のおしるこみたいな、そんな素朴な味。マレーシアの暑い気候を吹き飛ばすのではなく、現地の空気に溶け込むような心地よい口あたりで、一度飲むとハマってしまうのです。

 ということで今回は、マレーシアならではの色とりどりの飲みものに注目。まずは“黒いジュース”から紹介しましょう。

左:「羅漢果ジュース」。写真では茶色に見えるが、実際にはもっと濃い黒。コップの下に透けて見えているのがロンガン(龍眼)で、これもちゃんと食べる。中国系の屋台やドリンクスタンドで購入できる。
右:マレーシアの漢方専門店では、羅漢果の実を販売。家庭でもよく羅漢果ジュースを作るという。

 真っ黒なジュースの正体は「羅漢果」です。黒は、羅漢果の実を1時間以上じっくりお湯で煮出して出てきた自然な色。甘味果実である羅漢果は、黒砂糖のようなコク深い甘みがあり、黒飴のような味のジュースです。ライチによく似た「ロンガン(龍眼)」が入っていて、デザートとしても楽しめます。

 また羅漢果ジュースは、咳止め、デトックス、リラックスに効果があると言われる漢方ジュースで、なんとなく体調がイマイチ、というときにもよく飲みます。

2016.04.29(金)
文=古川 音
撮影=古川 音、三浦菜穂子