高槻市は、大阪市と京都市の中間にあって、両方のベッドタウンとして開発されてきました。マンションが競うように建つ阪急京都線高槻市駅から東に徒歩3分の所にある、旧大阪高等医学専門学校別館の建物は、国の登録有形文化財。アメリカ人建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズによって設計され、昭和3年に建てられた貴重な建築物。サセラン様式のアーチやアラベスク装飾などが用いられ、エキゾチックな雰囲気を漂わせています。

左:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計の旧大阪高等医学専門学校別館。
右:松並木が八丁(約900メートル)続いていたことから名付けられたという八丁松原。

 そのさらに東には、立派な和風の門から北に松の木が並んでいます。これは、八丁松原という松の並木道。城下町だった高槻に入る六口のひとつ、京口と呼ばれた高槻城から西国街道まで続いていた松並木の名残りです。

 少し歩いただけで歴史を感じることができる街で、2006年から営業しているのが、『フルーツガーデン オオサキ』。店主・大咲正一さんは、高槻で育ち、脱サラでお店を始めました。

「祖父が果物屋を営んでいて、小さい頃から店を継ぎたいと思っていたんです」。棚に置かれたモノクロの写真の『大咲商店』は、木造の建物の懐かしい果物屋さん。第二次大戦後からのお店でしたが、大咲さんが継ぐ前に閉店してしまったのだそう。

懐かしい木造の『大咲商店』のモノクロ写真が店内に。

 大学を出て10年以上、機械の商社で営業の仕事をバリバリやっていた大咲さんでしたが、15年ほど前に退職願いを出し、念願だった果物屋への道へ。まずは、果物の仕入れができるようにと茨木にある大阪府中央卸売市場で働き始めます。

「子供の頃、祖母がよく喫茶店へ連れて行ってくれて、ミックスジュースを飲んでいました。子供心に、おじいさんの果物屋ならもっと本格的においしく作れるはずだと思っていたんです。それで、ジューススタンドをやろうと決心。店を始める前の1年間、北海道から沖縄まで、あちこち見て回りました」。フルーツの組み合わせ、作り方のコツなどを参考にしたのだそう。「禁煙で、コーヒーもなし。フルーツの香りと合わないから」と、大咲さん。学生向けのカジュアルなお店です。

左:お店の前にはジュースのメニューの看板が。
右:ジュースの注文が入るたびに果物を選ぶ大咲さん。

 開業から8年経った今も、午前中は青果の仲卸店で働き、お店は午後からのオープン。「夢がかなったんです。楽しんでやっています」とにっこり。

 大咲さんが作るジュースは、どれも水を1滴も加えず、砂糖や蜂蜜などの糖分も足しません。濃厚で、果物をそのまま食べているようなジュースなのです。

 その代表が「パイナップルジュース」。

「パイナップルジュース」。この迫力でお値段は480円。

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2014.08.24(日)
文・撮影=そおだよおこ