クリスマスマーケットを撮影するコツ その3
「人々の祈りを感じ取る(感じ撮る!)」

左:ホットワインを手に買い物を楽しむカップル。
右:カフェの窓にも手作りのデコレーション。

 街を歩いているともうひとつ感じるのは、人々の気持ちがひとつになっていくという雰囲気だ。

 この雰囲気はイルミネーションや大きなツリーだけが作り出しているものではない。クリスマスに向けて人々の祈りが一層増していくからこそ、醸し出されるに違いない。だから、街ゆく人やなにげない通りなども撮影してみるとよいだろう。

ヴルタヴァ川にかかるカレル橋には左右の欄干にそれぞれ15体の聖人像が並ぶ。そのひとつ、聖ヤンネ・ネポムツキー像の台座部分に触ると幸せになるという。

 「もの」としてのクリスマス以外に「見えないもの」のクリスマスを撮るように心がけてみて欲しい。空気感を表す写真の練習にはもってこいの季節なのだ。私もすっかり物欲の悪魔から解き放たれ、2015年を静かに振り返る気持ちに包まれている。「もの」より「見えないもの」を大切にする、そんな気分なのだ。

 世界中どんな人にもやってくるクリスマス。この季節、誰もが心の温度を高くする。

カレル橋の上で何か見ながら祈っている少女。

 以上。次回は何のコツをお教えしようかと検討中。旅先の写真撮影でこんな時どうしたらいいの? など、取り上げてほしいテーマがあれば、CREA WEBの「掲載記事へのご意見・ご感想」フォームからご意見をお寄せください。

山口規子(やまぐち のりこ)
栃木県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、文藝春秋写真部を経て独立。現在は女性ファッション誌や旅行誌を中心に活躍中。透明感のある独特な画面構成に定評がある。『イスタンブールの男』で第2回東京国際写真ビエンナーレ入選、『路上の芸人たち』で第16回日本雑誌写真記者会賞受賞。著書にひとつのホテルが出来上がるまでを記録したドキュメンタリー『メイキング・オブ・ザ・ペニンシュラ東京』(文藝春秋)、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)や東京お台場に等身大ガンダムが出来上がるまでを撮影した『Real-G 1/1scale GUNDAM Photographs』(集英社)などがある。また『ハワイアン・レイメイキング しあわせの花飾り』『家庭で作るサルデーニャ料理』『他郷阿部家の暮らしとレシピ』など料理や暮らしに関する撮影書籍は多数。旅好き。猫好き。チョコレート好き。公益社団法人日本写真家協会会員。

Column

山口規子のMy Favorite Place 旅写真の楽しみ方

山口規子さんは、世界中を旅しながら、ジャンルを横断した素敵な写真を撮り続けるフォトグラファー。風景、人物、料理……、地球上のさまざまな場所でこれまで撮影してきた作品をサンプルとして使いながら、CREA WEB読者に旅写真のノウハウを分かりやすくお伝えします!

2015.12.16(水)
文・撮影=山口規子