【WOMAN】
アンが袖振り合うものは、人の有情無情と善行、犯罪

 〈私なら 毎日おなじ窓の外の景色は 嫌だな もっと冒険して くらしたいわ 驚きや危険や 太陽や暗闇と 隣り合わせの ような〉と、定住を嫌って家代わりの車に乗り、気ままな旅ぐらしを送るアン。お金がなくなれば、〈ショーバイ〉もするけれど、小金ができればブティックで服を買い、ボンネットをテーブルに、優雅にワインをたしなみつつ読書と決め込む。巻末の言葉を借りるなら、全世界が彼女の部屋であり、冒険のドアがいつも開けはなたれている毎日。

 ふつうは、途方に暮れている旅人に誰かが力を貸してくれるものだが、本書ではなぜかアンのほうがひと肌脱ぐはめになる。老富豪と結婚したせいで財産目当てと非難されるポルノ女優や、母親に放っておかれ気味の少女が立ち直れたのは、アンの気働きがあってこそ。過激だけれど自由で、自分らしくて、人の役に立ちもする。アンのような旅三昧の人生ってなんてハッピーなのだろう。

『Sunny Sunny Ann!』(全1巻) 山本美希

車に積み込んだ自分の身一つで生きていくんだと言わんばかりのパワフルでシンプルな生き方。時に危ない目にも遭うのだが、始末は必ず自分でつけるヒロインのアンがとにかくカッコいい! 骨太なストーリーに負けない太い線と、寄り引きを多用する独特の画力も見どころだ。
講談社 619円
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Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2015.06.02(火)
文=三浦天紗子

CREA 2015年6月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

夜ふかしのすすめ

CREA 2015年6月号

寝坊していい前日の、幸せな過ごし方
夜ふかしのすすめ

定価780円