日本は今大事な時期にきていると思う
大切なものを考える機会にしたい

振付は「宇宙から振ってくる」ものを受け取って作り上げていく。頭ではなく直観による創造。

 安易に一日一日を過ごしたくない……と西島さんは語る。

「日々生活をしていると、忘れがちなことも多いですよね。日本にいる限り、豊かな世の中ですし……様々なニュースも目に入ってくるけれど、観て聴いてそこでストップじゃなくて、少しでもよい方向に進めるために関わって生きていけたらと思います。自分も色々な方に支えられて今があると思っていますし。これからは後輩を支えたり、育てる立場になっていきたいと考えていて、その一環として、J.D.I.の活動をスタートさせたんです。日本はダンサーも含めて才能あるアーティストをサポートするシステムがないので、ちゃんとした支援のある国で活動するよりも大変なのです。お客様には、ダンスを通じて何が今、人間にとって必要なのかを感じてほしいです。ダンスに全く興味のなかった方にも来ていただきたいですし、そういう方々に“すごく面白かった”と言わせたい(笑)。ダンスでしか伝えられない感動があると僕は信じているので、それを感じてほしいんです」

 西島さん自身、2014年にアキレス腱を断裂。本番の演技中だったため自分で足首にテーピングをしたまま最後まで踊り切ったが、その後の手術とリハビリは苛酷なものだった。

「今年の1月に復帰公演を行って、精神面では以前よりも強くなった自分を感じています。今まで踊っていた脚と同じではないけれど、怪我をきっかけに“与えられた以上のことを、何かできないかな”と考えるようになった。何のために踊るのかが大切だと考えるようになった。でも“どうして自分はこんなに踊るんだろう?”と時々思いますね。子供の頃からずっと踊り続けてきたけれど、それは本当に理由がわからないんです(笑)」

 人生をダンスに捧げ、ダンサーとして多くの岐路を経験し、新たな試みを始動させた西島数博。彼と仲間たちの「プレミアム・ダンス・ガラ」は、観る者に貴重な感動を焼き付けてくれるはずだ。

西島数博さんが踊る「花は咲く」の紹介ビデオはコチラ!

西島 数博(にしじま かずひろ)
3歳よりバレエを学ぶ。18歳で渡仏、フランス・カルポー賞国際バレエコンクールで第1位受賞。プリンシパルダンサーとして様々なジャンルで活躍する一方、振付家としても数多くの作品を発表している。TVドラマ「池袋ウエストゲートパーク」にて自作のソロダンスを踊り、一躍メディアが注目。芸能界でも活躍し、主演映画『るにん』がLAの映画祭でグランプリを受賞する。演劇、ドラマ、映画など多くのメディアに登場するほか、ニジンスキープログラムによるプリンシパルガラや震災復興支援のバレエガラを企画開催。
公式ブログhttp://ameblo.jp/nishijima-kazuhiro/

2015年プレミアム・ダンス・ガラ公演
会場 メルパルクホール TOKYO(東京都港区芝公園2-5-20)
日時 2015年4月24日(金) 昼の部 14:00開場 14:30開演 夜の部 18:30開場 19:00開演
URL http://jdancei.com/

公式Facebookページ
URL https://www.facebook.com/j.dance.i

小田島久恵(おだしま ひさえ)
音楽ライター。クラシックを中心にオペラ、演劇、ダンス、映画に関する評論を執筆。歌手、ピアニスト、指揮者、オペラ演出家へのインタビュー多数。オペラの中のアンチ・フェミニズムを読み解いた著作『オペラティック! 女子的オペラ鑑賞のススメ』(フィルムアート社)を2012年に発表。趣味はピアノ演奏とパワーストーン蒐集。

 

2015.02.25(水)
取材・文=小田島久恵
撮影=杉山拓也