人々の心の灯りを見つめて踊り続けてきた4年間

震災から4年。復興支援の気持ちを忘れずに常に何が出来るのかを考えていた。「被災したためバレエを諦めなければならなかった子供たちもたくさんいました」

 今回の「プレミアム・ダンス・ガラ」では、東日本大震災の復興支援として西島さんが踊るソロ「花は咲く」も上演される。大災害から4年が経ち、被害の及ばなかった地域では悲劇の記憶が薄れる中、西島さんはチャリティー公演や募金活動もしていた。

「バレエを続けたいのに、震災によって続けることが出来なかった子供たちもいますし、そういう場所でワークショップをすることで何かの励ましになればと思ってきました。ガラ公演の作品映像を撮影するため、先日もカメラマンと一緒に宮城県の雄勝町を訪れましたが、多くの犠牲者が出た現地の小学校や港、まだ震災の日のままの場所に、ぽつんとランドセルが残されていたのです。あ、この子は僕が来るのを待っていたのかもしれない……と咄嗟に思いました。突風の中、シャツ一枚で踊りましたが、踊り始めると寒さも感じないほどで……とても空気の澄んだ穏やかな場所でした」

 西島さんによる「花は咲く」の振付は上半身の動きのみで、実に多くのメッセージを伝えてくる。ダンスでしか伝えられないメッセ―ジの豊かさに目を奪われる演目だ。

「振付は降りてくるもので、僕はよく言うんですが……宇宙と交信しているような感覚なんですね。言葉じゃなくて、全部フィーリングです。技術をパーツとしてつなげていく作り方もあると思いますが、そのやり方だと全部同じような振り付けになってしまうこともあります。上から降りてくるものを感じるがままに踊りにしていくと、自然な流れが出来て無理な感覚がないので、見ている人にも伝わりやすい。“自分が何を伝えたいか”ということを舞台ではいつも考えていますし、ガラ公演では大勢のダンサーがパワフルに踊る中で、僕がこのソロを踊る時間は静寂に包まれる雰囲気になれば、と思っています」

2014年にはアキレス腱断裂というアクシデントにも見舞われたが、復帰。「精神的には以前より強くなったと思います」

2015.02.25(水)
取材・文=小田島久恵
撮影=杉山拓也