オヤジかるた 女子から贈る、飴と鞭。

瀧波ユカリ

「マウンティング女子」の名付け親としても話題の瀧波ユカリさんが、愛されオヤジになれる46のメソッドをかるた形式で綴った、「週刊文春」連載エッセイが単行本に! 女子が読めば「こんなおじさん、いるいる~」と笑えて、おじさんが読めば「モテの奥義」が身に付く……という本書から、3話をご紹介!

 今回の札は「へ」、お題は「ヘアスタイル」です。この連載で髪についてふれるのは初めてですが、実は過去に何度も書こうとしました。最初は「う」(薄毛)。次は「か」(髪型)。そして「は」(ハゲ)。三度も先延ばしにしたのには、理由があります。髪型及び髪がない状態について語るために、自分が持つ偏見を払拭する必要があったからです。

 正直に申しますと、私は長いこと髪がない状態(以下「ハゲ」と称します)を「笑っていいもの」だと認識していました。もちろん公衆の面前で指をさしてゲラゲラ笑ったことはありませんが、学生時代に高齢の教師が黒板に向かっている時に友人達と「ハゲてきてない?」とささやき合ったり、ホステス時代に憎らしいお客さんのことを同僚と密かに「ハゲオヤジめ~!」と罵ったり、そんなことを日常的に行ってきたのです。

 しかしこの連載を始めて、オヤジ様について深く考えるようになると、ハゲというキーワードがやにわにリアルな「悩み」として感じられるようになってきました。己の意志とは全く関係なく頭髪は抜け落ち、それを阻止するために洗髪回数を減らすと直ちに外見は不衛生の様相を呈し、せめてもの抵抗とばかりに地肌が露出した部位にサイドの毛をかぶせれば「バーコード」と揶揄され、かつらをかぶれば指名手配犯のようにいつバレるかと気が気でなく……これほどまでに八方塞がりだというのに、誰からも同情されない、それがハゲ。あんまりではないか! ……そのような結論に至るまでに、「へ」までかかってしまいました。今は悔い改め、ハゲを笑おうなんて気は毛ほどもおきません。

 それでも、です。右耳の付け根あたりの毛を、頭頂部を経由し左耳に届くほどに伸ばして載せていたり、後頭部の毛を長くして頭頂部にトグロ状にしてあしらっているオヤジ様を見ると、さすがに笑ってしまいます。しかしそれは、ハゲを嘲笑しているわけではありません。ハゲを隠したい気持ちが強すぎてこんなヘアスタイルに? と思うことでおかしくなってしまう。つまり問題はヘアスタイルにあるのです。

 オヤジの皆様! もしあなたがハゲていても、私は笑ったり揶揄したりしません。ハゲても堂々としろ、などとマッチョなことも言いません。悩み、迷い、恥じながら、それでも前を向いて生きるオヤジ様が好きです。ただし、ハゲを隠したいあまりにトリッキーすぎる髪型にするのは、どうかお控え下さい。私が今回もの申したいのは、この一点限りです!

 最後に、孫正義さんがネットでつぶやいたことで有名になった格言をここに捧げます。「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」。日本の全てのハゲオヤジ様に、幸あれ!

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瀧波ユカリ 近況

月刊「アフタヌーン」で新連載『あさはかな夢みし』が始まりました。平安時代が舞台です。この時代の男性は歌を詠んだりお化粧をしたり失恋のショックで死んだりするので可愛らしいです。でも奥さんを何人も持った上に飽きたら放置したりするので、可愛さ余って憎さ百倍です。しょぼくれたサラリーマン川柳を詠んでる現代のオヤジ様に見習ってほしいようなほしくないような……。

プロフィール

1980年北海道札幌市生まれ。漫画家。日本大学藝術学部写真学科卒業。2004年『臨死!! 江古田ちゃん』でアフタヌーン四季賞大賞を受賞しデビュー。著書に漫画『臨死!! 江古田ちゃん 』(講談社)、エッセイ『はるまき日記』(文春文庫)、 『女もたけなわ』(幻冬舎文庫)、『オヤジかるた 女子から贈る、飴と鞭。』(文藝春秋)、『あさはかな夢みし』(講談社)など。

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