テーマを立てて、美術展どうしをつないでいく

上野の東京国立博物館にて、9月15日まで開催の特別展『台北 國立故宮博物院─神品至宝─』。2014年で最も注目される美術展です。

 このイベントの直後に開催予定で、「國立」の表記の件でも話題になっていた「台北 國立故宮博物院─神品至宝─」(東京国立博物館にて、9月15日まで開催)を橋本さんは例に出しました。

「故宮展には、皆さんが観ると、『なんだかすごく好きじゃないんだけど!』と感じるものも、たくさん出ているんじゃないかと思います。
 日本美術は、たしかに、中国大陸、朝鮮半島の美術を手本にしてきているんですが、中国美術史のどまんなかの作品と、日本人が好んで日本に取り入れたものは明らかに違うんですね。
 日本人が中国のどまんなかA級作品を手に入れられなかったのか、あるいは、自分たちの好みで、どまんなかではない周辺のものを取り入れたのかは、中国美術史の研究者にもわかっていません」

 知らなかった! そうなのか! とみんな興奮。

「日本人が参考にしてきたものも、していないものもある。いまの日本人が観て何か感じるところがあるものもあれば、『ぜんぜん意味がわかりません!』というものもあるのが故宮博物院です。
 それに対して、同じく東京国立博物館東洋館の特集展示『日本人が愛した官窯青磁』(10月13日まで開催)には、官窯(中国の皇帝の命によって青磁を焼造したと考えられる窯)の青磁作品が並びます。こちらの作品は、すべて、日本人がなんらかの理由でチョイスしてきたもの。
 見比べてみて、双方の違いを探してみるのが、実は面白いポイントじゃないかなと思います」

 そう、行列して○○展を観た、で満足して終わってしまいがちです……。テーマを立てて、美術展どうしをつないでいくことで、ただ「○○展を観た」、「□□展に行った」、で終わらない体験ができるということですね。

 CREA本誌での連載「橋本麻里のArt Walking」でも、まさに「点から線へ、線から面へ」をキーワードに、1つの美術展への着眼から始まり、同時に訪れるべき2つ目、3つ目の美術展が併せて紹介されています(特別展『台北 國立故宮博物院─ 神品至宝─』については門外不出のあの秘宝も奇跡の初来日! 華やかな中華文明を日本で見られる好機を参照)。 

 次回はトークのまとめ、「アート作品を自分の家に置く醍醐味」についてのお話をレポートします!

2014.07.19(土)
撮影=鈴木七絵