自分の走り方を肯定してくれる場所はきっとどこかにある

――モデルや俳優として活躍されている山本さんを見ていると不器用という言葉とは縁遠いように感じます。

 それが全然そんなことないんです。

 高校を卒業して、みんなが進学したり就職をしていく中で、私はやりたいこともないのに漫然と就職するのも違うかなって思ってフリーターになりました。でも同時に、当時はどうやって生きていけばいいんだろうってずっと考えていて。

 私はたまたまモデルという職業に巡り合って、何かしら自分が得意としている分野はこの世の中に存在するんだ、と気づけたし、自分の走り方を肯定してくれる場所を見つけられただけなんです。

――世間一般的に働くことや社会に出ることは、ずっと自分のペースではいられなくなるということと一緒な気がします。桐子も予算の問題でやれることに制限がかかったり、プライベートの影響で気持ち的にこれまで通りには走れなくなったりします。

 自分に合わないペースで走らなくちゃいけないって、難しいですよね。私もうまくできなくて、バイトの時とかいつも怒られていました。桐子もマイペースではあるけれど、走ってでも撮りたいものは撮るという強い想いがある子。でも、走る意欲はあるんだけれど、走り方がわからない。

 最初は自分の「撮りたいもの」を言語化して周りのスタッフに伝えるということをしたがらないですしね。「やりたいことが決まってたら別にさ、映画なんて作らないし」って彼女が言うシーンがあるんですが、これは言葉にすることで固定化されちゃうことへの恐怖もあったんだと思うけど、映画作りの過程で自然と自分の思いが共有されていくものだと甘く考えていた部分もあったのかなと思います。

2024.04.25(木)
文=CREA編集部
写真=釜谷洋史
ヘアメイク=kika
スタイリスト=佐藤奈津美