無理難題に応えた山崎賢人

加門 龍の表現が大変だったとおっしゃいましたが、晴明がその龍を呼び出す呪文シーンの撮影も大変でしたよね。呪文を唱えながらスムーズに印を組み替えないといけないので、「とにかくかっこよくやって」と、山崎さんには無理難題をお願いしました。

佐藤 加門さんは古武道をやっているからか、教え方が厳しかったですよね。だんだん「そうじゃないっ!」って、『ガラスの仮面』の月影先生みたいでしたよ(笑)。

加門 そんな厳しいことは言ってないと思いますけど、江戸っ子だから、言葉が早くてきつく感じるんだと思います。ただ、晴明が術で空間を切り開くシーンでは「それはなぞっているだけ。切るんだから切れ」と、手加減なしで教えたような(笑)。

佐藤 みなさんがそうやって緊張感を持って挑んでくださったので、ビシッとした絵が撮れました。

 山崎さんと染谷さんは、実際はふわふわ~っとした方なんですよ。誕生日が近いせいか、おふたりとも雰囲気が似ていて。撮影中は緊迫ムードでしたが、カットがかかると、ほわほわ~っと会話していて面白かったです(笑)。

加門 おふたりは、作品上でも現場でも、すごくいいバディでしたよね。染谷さんが演じた源博雅は、晴明の浮世離れしていくようなところをちゃんと繋ぎ止める紐。一方、山崎さんが演じた安倍晴明は、普通の貴族官僚として生きようとする博雅をちょっと浮き上がらせる存在。そんなふたりを見事に演じていたと思います。

 

現代社会に蔓延する「呪」も祓いたい

佐藤 今回の映画はファンタジー要素だけでなく、現代社会を反映するような内容にもこだわりました。SNSなどで人が作ったストーリーを信じてしまうフェイクニュースは、まさに「呪(しゅ)」そのものです。そう考えると、現代人は意識的に呪に取り込まれているわけで、これをスッと祓ってくれる陰陽師が現れるとよいのではと考え、安倍晴明を復活させたというのもあります。

2024.04.25(木)
文=相澤洋美