今日子さんもご家族を亡くされましたが、そのお別れをどう捉えたか伺ってもいいですか。

 

小泉今日子が唯一立ち会えなかった、家族の死

小泉 私は家族の臨終の場面にいつもいたんです。最初は父ノブヒロで、私が27歳のときでした。このときは姉妹3人で見送りました。

 長姉のヨーコが逝ったのは私が48歳のとき、ヨーコ本人は56歳という若さでした。私も姉の子どもたちと一緒に見送ることができました。

 そして母ユミは一昨年のクリスマス、ついさっきまでみんなもいたのに、というときに逝ったので、私ひとりで看取りました。

 泣いたことはありません。私が最期まで見届けて、これからお別れをしたいという人たちにきちんと説明してあげなくてはいけないという思いが強かったです。

 泣いたのは猫の「小雨」が死んだときです。小雨の最期だけは立ち会えなかった。まだ9歳で、仕事に出かけるときはいつも通り元気だったのに、帰宅すると冷たくなっていました。それから1年ぐらいは、小雨に会いたくて泣いていましたよ。

 ただ養老さんがおっしゃるように、私も母が亡くなってからずいぶん月日が経っても、夜ひとりで車を運転しているときに思い出すことがあります。ああ、あのときは私が間違っていたのかもしれないなと後悔したりしながら、ゆっくりゆっくりサヨナラをしていくのかな。

※内田也哉子さん・本木雅弘さん夫妻の小泉今日子さんとの30年近くにわたる交友や、それぞれの母との関係、両親の遺品整理についてのエピソードなどが登場する記事全文は、発売中の『週刊文春WOMAN2024年春号』で読むことができます。

text:Atsuko Komine
photographs:Takuya Sugiyama
hair & make-up:Ayumi Ishida(Koizumi),
Manami Kiuchi(Uchida)

小泉今日子
Kyoko Koizumi

こいずみきょうこ/1966年神奈川県生まれ。82年「私の16才」で歌手デビュー。俳優としても活躍。2015年より代表を務める「株式会社明後日」では、プロデューサーとして舞台や音楽イベント制作なども手がける。上田ケンジとの音楽ユニット、黒猫同盟の2ndアルバム『ムーランルージュの黒猫』が発売中。最新刊『ホントのコイズミさん NARRATIVE』は人気ポッドキャストの書籍化第3弾。

内田也哉子
Yayako Uchida

うちだややこ/1976年東京都生まれ。エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションのほか音楽ユニットsighboatでも活動。著書に『会見記』『BROOCH』『9月1日 母からのバトン』『なんで家族を続けるの?』(中野信子との共著)など。Eテレ『no art, no life』(日曜朝8:55~)では語りを担当。作詞を手がけた森山直太朗の「ロマンティークfeat.内⽥也哉⼦,ハナレグミ, OLAibi」が発売中。

週刊文春WOMAN Vol.21 24年春号(文春ムック)

定価 715円(税込)
文藝春秋
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2024.04.06(土)
Text=Atsuko Komine
Photographs=Takuya Sugiyama
Hair & Make-up=Ayumi Ishida(Koizumi),
Manami Kiuchi(Uchida)