この記事の連載

この経験は僕の役者人生にとっても貴重な財産

――出演をはじめて100公演という節目を迎えましたが、膨大な台詞量はもうお手の物ですか?

 スコーピウスはオタクなので、とにかく喋る量、特に説明台詞が多いんですよね。だから観客に聞き取ってもらえるような喋り方を意識していますし、立たせたいワードを引き立たせるようにしています。回を重ねるごとに上達していっていると思いますので、何度も観にきていただけるとうれしいです。

――ちなみに、とちってしまった回などもありますか?

 それはもう何回も(苦笑)。台詞を噛み倒した回もありますし。少し前の公演で、台詞が完全に飛んでしまう初めての瞬間が訪れました……。頭が一瞬パーンと真っ白になって、時間の流れがものすごく長く感じて。それでも大丈夫な感じを装い頑張ってなじませた、はずです(笑)。日々経験を積ませてもらっています。

――スコーピウスはずぶ濡れになるシーンがあったり、アクションシークエンスも多いですよね。

 本当にアスリート並みに動いてると言っても過言ではないですね。最初は練習のたびに筋肉痛になっていました。マイケル・ジャクソンのように斜めに傾くシーンもあったりして。

 心・技・体、すべてが大切ですが、こういうロングラン公演では体づくりというのは本当に大事だなと痛感しました。稽古では、必ず体づくりから始めて、朝30分、体幹・筋トレをやって皆さんと汗を流して取り組んでいます。

――その毎日の積み重ねが舞台の成功につながっているんですね。『ハリー・ポッターと呪いの子』では終了後のスタンディングオベーションも印象的です。

 最後にカーテンコールで出て行ったときのあの拍手と歓声。毎日、毎回、本当にやってよかったと感動します。3時間40分という決して短くはない時間を観てくださった皆さんが立って拍手してくださることが、本当にうれしいです。「この仕事をやっていてよかった」と思う瞬間です。

――私が観劇した回では、お父さんのドラコ・マルフォイ役・内田朝陽さんと抱き合っていらしたのも感動的でした。

 そうなんです! 内田さんと松田慎也さん(※Wキャスト)とは、カーテンコールの一番最後にそれぞれ合図を決めているんです。内田さんとはハグして終わる、松田さんとはグータッチで終わる、というのがいつのまにか出来上がっていました。「お疲れさま」という意味合いで、ルーティンでやっているんです。

――まだまだ続く公演ですが、現時点で『ハリー・ポッターと呪いの子』は自分にとってどのような経験になりましたか?

 初めての舞台ですが、最初にこの舞台を経験したら何でもできるのでは、無敵なんじゃないか、と思えるくらい充実した毎日を過ごしています。いろいろな先輩方とご一緒させていただけたこと、その出会いが本当に貴重だと思っています。この作品が終わったとしても、次にまたどこかで皆さんとご一緒したいという目標もできました。それに向けて、僕自身も全力で頑張っていきたいです。こうしたご縁をいただけたことが、僕のこれからの役者人生にとってすごく貴重な財産になっていると思います。

西野 遼(にしの・りょう)

2000年11月27日、三重県出身。第32回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリ&QBナビゲーター賞を受賞。2020年から俳優として活動を開始し、ドラマや映画などで活躍。近年の主な出演作にドラマ「にがくてあまい」や映画『アキラとあきら』など。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

会場 TBS赤坂ACTシアター
所在地 東京都港区赤坂5-3-2 赤坂サカス内
公演スケジュールおよびチケット購入はこちら
https://www.harrypotter-stage.jp/

次の話を読むコンビニのおにぎり2つとパイン これが僕の本番ルーティンです(笑)舞台ハリポタ出演の俳優の整え術

2024.03.30(土)
取材、文=赤山恭子
写真=鈴木七絵
ヘアメイク=赤塚修二
スタイリスト=永田哲也