マイナス50度の湖上でうっかり居眠り

 イエローナイフは、オーロラベルト(オーロラが高頻度で発生する帯状の地域)の真下に位置し、周囲にさえぎる山脈もないことから、オーロラを見られる確率は世界でもトップクラスといわれている。昼の取材を終えた私たちは、オーロラを見るべく、日没後の湖へと向かった。

厚い雪に覆われた湖は、オーロラ鑑賞のメッカ。

 厚く凍った湖上の気温はマイナス50度。雪の上に置いた折りたたみ椅子に座ってオーロラを待ちながら、ときおり、先住民族が使っていた移動式住居ティピーを模したテントの中に入り暖をとる。テントは暖炉も完備されていて、なかなか快適。夜食にカリブー(トナカイ)のミートボールを食べたり、ホットココアを飲んだりしながら、待ち時間を過ごした。

中にはソファもあって快適なティピー風テント。

 そろそろオーロラが現れるはず。そう聞いて、夜空の下で待つこと数時間。雲の向こうには優雅に光が踊っているはずなのだが、曇天のためか、いっこうに姿を現さない。単純計算では、3日に1度はオーロラが発生することになるのだが、自然の奇跡は計算どおりにはいかないのだ。

テントの中では暖炉にあたり、外では焚き火で焼きマシュマロを食べながら、気長にオーロラを待つ。

 時刻は深夜1時。連日の移動疲れもあり、あろうことか、私は雪上で椅子に座ったまま、思わずうたた寝をしてしまった。30分ほど経った頃だろうか、「きれいだったねー」「見えてよかったねー」という、ほかのツーリストのざわめきで目を覚ましたときには、オーロラはすでに漆黒の中。夜空に一瞬だけ幻想的な姿を見せた自然の神秘も素晴らしいが、マイナス50度の中で居眠りしても生きていられる防寒服にも深く感服した。

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2014.02.25(火)
text & photographs:Kazumi Serizawa