持続可能な地球の未来に貢献する5人の受賞者たち

 今年2月に発表された2023年度のロレックス賞の受賞者たちは、性別も国籍もバックグラウンドも異なる5名。地球環境や人類の未来に対する深い洞察と決意に満ちたそのプロジェクトを紹介しよう。

大気から水を抽出し、乾燥地帯の人々に安定供給(ベス・コイギ)

 広大な乾燥地帯が広がり、半数以上もの人々が今も衛生的な飲料水を確保できていないと言われる東アフリカ。ケニア人の起業家であるベス・コイギは、大気中に地球上の河川をあわせた量の6倍もの水が含有されていることに注目し、大気中から水を抽出・ろ過する大気水生成装置(AWG)を開発した。彼女が起業したマジックウォーター社は現在、月に20万リットル以上の水を産出し続けている。さらにコイギ氏は、生成した水を適正価格で販売する販売店の立ち上げなどにより、各AWGが日々50世帯に衛生的な飲料水を供給しながら、自らの運営コストを賄うことができる仕組みを作っている。

地域コミュニティ主導の原生林保護活動を促進(インザ・コネ)

 西アフリカで最高レベルの生物多様性を持つにもかかわらず、近年、原生林がわずか2%まで減少してしまったコートジボワール。コートジボワール初の霊長類学者であるインザ・コネは、11の農村と協力し、原生林の保護活動に努めてきた。特筆すべきは、そこで暮らすコミュニティ主導の保全モデルを作り上げたこと。地元住民に対し、環境モニタリング技術のトレーニングを行うだけでなく、密猟などに頼らないサステナブルな生活手段をともに模索。小さな工場に近代的な設備を導入することで、キャッサバ農家の収入を5倍まで改善させることにも成功した。コネ氏は今後、コニュニティが独自に森林を管理できるようになる状態を目指すと言う。

人工衛星による野生のラクダの追跡と保護(シャオチュアン・リュウ)

 野生のラクダは、何千年にもわたりゴビ砂漠に生息してきたが、現在は約1000頭まで減少し、絶滅の危機に瀕している。シャオチュアン・リュウは、人工衛星を利用し、野生のラクダの生態を調査。調査の結果、気候変動と人間の経済活動によりラクダの生息地が大幅に縮小していること、寒冷な高地に移動せざるを得なくなったことで、オオカミに捕食されやすくなり、飲み水が得られる場所の減少が疫病の集団感染の可能性を高めていることなどを突き止めた。「ラクダがどこへ行き、どこで水を飲み、どのような脅威にさらされているのかを発見することで、ラクダのための水資源の保護や保護区域の設定計画を立てられます」とリュウ氏。彼のデータは、すでに二カ所の巨大な保護区を設定するプロジェクトに役立てられているという。

アンデスの自然を蘇らせる大規模な森林再生活動(コンスタンティーノ・アウッカ・チュータス)

 氷河の後退や、急速な森林伐採による土壌の浸食、そして水資源の減少といった環境の変化により、98%の原生林が失われたと言われるアンデス高地。ケチュア族の農民の家系出身である生物学者コンスタンティーノ・アウッカ・チュータスは、受け継がれてきたアンデスの森林が大幅に消失しているのを目の当たりにし、アンデス中の地元コミュニティの協力を得て、大規模な森林再生活動を開始した。チュータス氏はペルーのビルカノタ山脈に、60以上のコミュニティが参加する16の保護区を作り、村人を集めて1日で57,000本もの木を植えるイベントを開催。現在その活動はエクアドル、チリ、ボリビア、アルゼンチン、ペルーまで広がり、これまでに彼が植樹してきた樹木は450万本以上にも及ぶという。

伝統農法の再生により、農村女性の雇用を創出(デニカ・リアディニ=フレッシュ)

 開発経済学者としてキャリアを踏み出したデニカ・リディアニ=フレッシュは、インドネシアの世界銀行に就職し、農村で暮らす女性たちに出会った。そこで必要なものは援助ではなく仕事なのだと気付き、衣料品ブランド・スッカチッタを設立。土壌を回復させる伝統的な栽培法で作られたコットンを、天然植物由来の染料のみで染色した衣料品を、世界中に提供している。さらには、村に工芸学校を設立し、伝統的な農業と織物の技術とビジネススキルを学ぶ機会を提供。公正な賃金を得られる雇用を何百件も生み出してきた。農家から織物職人、そして裁縫職人まで、1,400人以上もの人々がこのプロジェクトの影響を受けているという。

 独創的なプロジェクトに挑み続ける5人の受賞者。ロレックスは常に、彼らのような挑戦者たちのそばでサポートを続けてきた。ロレックス賞を通じて、私たちもまた、地球が瀕している危機について、そして私たちが住むこの美しい惑星を未来へと守り継ぐために何ができるか、改めて考える機会としたい。

パーペチュアル プラネット イニシアチヴとは?

未知の世界に挑む探検家たちを支え、ロレックスがより良い世界の構築に向けて永続的に貢献していくことを望んだ創立者ハンス・ウイルスドルフ。2019年、ロレックスは創立者のこの思いを受け継ぎ、「パーペチュアル プラネット イニシアチヴ」をスタート。環境保護への取り組みを強化した。「ロレックス賞」をはじめ、ナショナル ジオグラフィック協会とのパートナーシップによる科学を通じて気候変動を理解する活動、海洋保護区「ホープ・スポット」の設置を促す「ミッション・ブルー」プロジェクトといった活動を通じ、地球の未来への貢献を続けている。

ロレックス

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2024.03.28(木)
文=CREA編集部
協力=ロレックス