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赤ちゃんパンダを育てるのは手術と同じくらいの緊張感

 自然交配や人工授精が成功したら「妊娠しているか」「出産はいつか」を見極めることが重要です。受精卵が子宮内膜に着床すると妊娠しますが、パンダは着床が遅れる動物。妊娠時期の推測は容易ではありません。しかも赤ちゃんは大人の約1000分の1、わずか100~200gほどの体重で生まれるため、母親の外見からは妊娠を判断できません。そこで血液検査などをして、妊娠の成立と出産時期を推測しています。

 人工保育も準備します。パンダは問題なく子どもを育てあげることが比較的難しい動物とされ、人の手で母親のパンダから搾った母乳を赤ちゃんパンダに飲ませることもあります。

 赤ちゃんが生まれてから這って移動できるようになるまでの約4カ月間、獣医師と飼育係と補助の職員は交代で24時間、子育てに奮闘します。「鳴いてじたばた動き回る小さな赤ちゃんに対して行う全ての行為は、私たちにとって普段の手術と同じくらい緊張感マックスで、経験した後は、思いのほか筋肉痛になっています」(獣医師)

2024.03.17(日)
文・撮影=中川美帆