寄せ集めのメンバーはときに足りなくなるため、野球経験のない留学生のシャオさんも参加したりと、試合が成立するかはいつもギリギリ。

 

 ある時、いよいよメンバーが揃わなくなった時、シャオさんが「それならば、誘いましょう」と、偶然そこに立っていた男性をスカウトする。

 草野球への参加を快諾してくれた「えーちゃん」は、試合が始まるとピッチャーを担当。

 相手バッターが守備の穴であるシャオさんのセカンドを狙っているのを知ると、その卑怯な攻め方に腹を立てたのか、「えーちゃん」は「まっすぐ、真ん中」を宣言。大きく振りかぶると、とんでもない剛速球を投げ込んだ。

 その試合から数日後、朽木はシャオさんに話があると呼び出され、そこである昔の画像を見せられる。

 そこには「えーちゃん」と瓜二つの人が写っていた。

 ただ、その人はもう、この世にはいないはずの人物だった。

 そこで朽木とシャオさんは、「えーちゃん」の正体を探りはじめる。

――この物語は、どうやって生まれたのですか?

万城目さん「生者と死者が交わる場所、という切り口で京都を描いたら、なにか書けるんじゃないか、というアイデアが、あるときフッと湧きまして。それがきっかけでした」

主人公たちの姿を借りて、ちょっと前に進めるような言葉を

「えーちゃん」と古い写真の人物は、他人の空似か? 

 そうでなければ、なぜ「えーちゃん」は京都にあらわれたのか。

 そして「えーちゃん」は野球にどんな思いを抱いていたのか?

「みんな、野球がやりたかったんだ」――。

万城目さん「なにかしらひとつの出来事を経て、僕なりに主人公たちの姿を借りて、ちょっと前に進めるような言葉を残しているので……」

――読んだ人に一歩、勇気を与えてくれるような、そんな言葉を。

万城目さん「そうなっていたら嬉しいな、と思っています」 

 まさに夏の京都が生んだ奇跡の作品だ。


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2024.01.30(火)
文=「本の話」編集部