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『台北ストーリー』の舞台となった「迪化街」

 エドワード・ヤンの長編二作目となる『台北ストーリー』は、台湾ニューシネマの仲間であったホウ・シャオシェン監督が製作を担当、さらに人気歌手のツァイ・チンと共に主演もした映画。幼なじみとして台北に育った男女が、それぞれに未来への夢を抱きながら次第に行き詰まっていく様子が、急成長を遂げる台北の景色とともに描かれる。ホウ・シャオシェンが演じるのは、迪化街(ディーホアジエ)で布屋を営むアリョン。幼なじみのアジン(ツァイ・チン)が働く松山区のオフィス街とは対照的な、昔ながらの街並みが残る問屋街だ。この歴史ある街で育ったアリョンとアジンは、アメリカへと渡り新生活を始めることを夢見ながら、古いしがらみに縛られ身動きが取れなくなっていく。

 布屋から漢方薬、乾物など、さまざまな種類の問屋がずらりと並ぶ迪化街は、観光にはぴったりの場所。街の中心にある「永楽市場」の2階、3階は布類を扱う問屋街、1階は食料品を扱う市場になっていて、野菜や魚、肉を売る店から、麺や寿司、美味しいおこわを扱う食堂などがずらりと並び、平日でも買い物客や食事を楽しむ人たちで賑わいを見せる。

 映画が撮られた80年代とはだいぶ景色は変わったはずだが、街には今も『台北ストーリー』に映っていたようなレトロな建物がいくつも発見できる。手軽な食堂はもちろん、古いビルを改装したカフェやレストランが多くあるので、お土産を選びながら、食事をしたりコーヒーを飲んでゆったりするのもおすすめ。

2023.11.27(月)
文・写真=月永理絵