衝撃だった一世風靡セピア

 思い返してみれば、柳葉敏郎については、昔からいろいろ気にはなっていた。初めて彼を観たのは、確か『欽ドン! 良い子悪い子普通の子おまけの子』(1983年)の良川先生役。メガネ姿と秋田弁で、ほのぼのコントを披露していた。ところがその後彼は、一世風靡セピアの中心メンバー、ジョニーとして人気者になるのだ。アグレッシブに飛んだり跳ねたりしながら歌う姿は超イケており、驚いたものである。

 一世風靡セピアは大ヒット曲「前略、道の上より」(1984年)も良かったが、私は1988年の9thシングル「汚れつちまった悲しみに...」という歌が忘れられない。バンカラで最高に粋なのだ!

 昔は、「汚れつちまった悲しみに...」というワードを見れば、自然と中原中也の詩が浮かび、「今日も小雪の降りかかる 汚れつちまつた悲しみに 今日も風さへ吹きすぎる……」とスラスラ口から出てきたものだ。

 ところが一世風靡セピアの曲を聴いて以降、

「俺の青春もナンボのもんじゃい!」

 と彼らの歌の歌詞が真っ先に浮かぶようになり、中原中也の詩をスッカリ忘れてしまった。一世風靡セピア、ある意味、罪な男たちである。

2023.11.20(月)
文=田中 稲