スーツやジャケットにぴったりの上品な顔つきですが、レザーバンドをスポーティなナイロンバンドなんかにカスタムすれば、カジュアルスタイルにもマッチするでしょう。お手頃価格のドレスウォッチや使えるセカンドウォッチをお探しの方にもおすすめの名作です。

ジーンズに合わせてもシブい腕時計

(4)セイコー「キングセイコー SDKS003」(22万円)

関口 最後に20万円台の機械式腕時計です。1961年、当時のセイコーの生産拠点のひとつであった東京・亀戸の第二精工舎のもと、デビューした「キングセイコー」。70年代にいったん生産が休止されたこともあり、長らく“知る人ぞ知る名作”だったのですが、近年、復刻モデルがリリースされ、にわかに注目を集めています。

 

「キングセイコー」の魅力、それは凝縮された高級感です。私が持っているのは2代目のキングセイコー、KSKをベースにした「SDKS003」ですが、注目すべきはケースの仕上げ。もともとセイコーは卓越した研磨技術を持っているのですが、このモデルにおける研磨にはその真骨頂が見られます。22万円という価格帯ではなかなか見られない手間ひまがかけられていて、職人の粋を感じさせます。

 ほかにもシンボルの盾マークや高級ライターを思わせるライターカットが施された12時位置のインデックスなど質感の高いディテールが随所に。カラーバリエーションも充実していますが、私が買ったのは、グレーの文字板にタテの筋目が配されたこちら。かちっとしたスーツはもちろん、ジーンズに合わせてもシブい1本です。

腕時計は持ち主の個性や価値観を映す“嗜好品”

――ご紹介していただいた4本中3本が日本ブランド。やはり日本の時計技術は優秀なんですね。ただ、ふと思ったんですが……。例えばApple Watchだってオンオフ問わず使えますし、大人が着けていても恥ずかしくありません。価格も数万円~10万円台から手に入りますし……。なのに今なぜ、わざわざ本格的な腕時計を選ぶ人が根強く存在するのでしょう?

2023.10.28(土)
文=押条 良太