お化け屋敷の基本は「お客様へのいやがらせ」

――お化け屋敷って、どういう手順でつくるんですか。

Coco 運営陣でいくつかアイデアを練って、その案をお化け屋敷の会場となる建物の管理者に提案する。そういうかたちをとる場合が多いですね。建物によってストーリー、構成や演出、ディスプレイが変わってくるので、「どんな建物なのか」がとても重要なんです。だから下見はかなり綿密にやります。

 たとえばお客様側に「ポイントを探す」「お札を集める」などのミッションを与えるならば、建物を下見しながら「ミッションの実行をどの場所にするか」などをスタッフと話し合って決めてゆきますね。

――Cocoさんがお化け屋敷を制作するうえで、大切にしていることはありますか。

Coco 基本は、「お客様へのいやがらせ」です(笑)。恐くて、不快で、でも楽しい。それがお化け屋敷だと思うんです。「なんかここ、いやだ」と思ってもらわないと始まりません。

 とはいえ、なによりも、お客様の安全が第一。「段差でつまずかないか」「足元が暗くて、こける危険性はないか」「天井から物が落ちてこないか」「釘が出たりしていないか」を徹底的にチェックします。そして、「この場所は暗いと危ないから、恐いオブジェを置いてライトを照らそう」など、建物の造りに応じて考えますね。

――お化け屋敷のところどころに怪しい造形物が置かれているのは、安全性の確保でもあったのですか。それは意外でした。Cocoさんのお化け屋敷には、どのような特徴がありますか。

Coco 私が制作するお化け屋敷は、お客様に先ず必ず映像を観ていただくんです。始めにストーリーを映像と音声で説明したほうが世界観に没入できるんですよ。たとえ入り口に説明書きを掲げていても、お客様が通り過ぎてしまう場合が多いですし、サーッと読んでも頭に入らないですしね。

 流す映像は京都の某心霊スポットで撮影する場合もあります。やっぱり、心霊スポットと呼ばれる場所でしか醸しだせない味わいがあり、セットでの再現は難しいですから。

 そして、映像に出てきたアクターさんが、お化け屋敷の中でもう一度、姿を現す。たとえば今年6月に開催した「大阪都市伝説 赤い女」なら、先ず映像の中で巫女さんが「こういう箇所には気をつけてください」と注意事項やミッションを説明します。その後、真っ赤な衣装を着た同じ巫女さんが実際に出てくるんです。「テレビの中の人が目の前に現れた!」という驚きがあり、それによって恐怖感が倍増する。巫女さん自身もアドリブを利かせたり、登場の仕方にアレンジを加えたり、ノリノリでやってくれましたね。

――Cocoさんが制作するお化け屋敷は、演技力も問われますね。

Coco 私はアクターさんの演技をとても重要視しています。お客様のリアクションに応じて演出方法を変えなきゃいけないので、アクターさんにはさまざまなパターンの演技を憶えてもらうんです。

――え、客によって演技を変えるんですか。

Coco そうなんです。お客様のなかには、お化けをまったく見ずにスルーする方もおられます。そういう場合はお客様の視野にまわり込んだり、下ばかり向いてるお客様がいらしたら、顔を下からのぞき込んだり。耳を塞いでる方にはできるだけ視覚的に恐く感じるようにとか、臨機応変に変えていますね。

――アクターさんもやりがいを感じるでしょうね。今後の事業展開はどのように考えていますか。

Coco まだ発表できる段階ではありませんが、「ハロウィンの時期に大阪でお化け屋敷をやりたいね」と、現在ミーティングをしているところです。

 そしてやっぱり、再び常設のお化け屋敷を運営したい。目標は「京都怨霊館の再開」です。いまでも「京都のお化け屋敷、よかったです」「復興、頑張ってください」とよく言われるんです。

 もう一度、自分のお化け屋敷を持ちたい。恐くて楽しい場所を開きたい。それが夢ですね。高校時代のお泊り会でやった肝試し、友達とはしゃぎあったあの楽しい夜、それが私の原点なんです。

Coco(ココ)

京都府出身。怪談師兼ホラープランナー。TikTokのフォロワー数は26万人。SNSの総フォロワー数は30万人を超える。近著に「怪談怨霊館」(竹書房怪談文庫)。

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2023.10.04(水)
文・写真=吉村智樹