この記事の連載

 夏祭り、バーベキューの締め、カップ麺と様々な場面で親しまれているソース焼きそば。しかしその起源はあまり知られていない。ソース焼きそばはいつごろ、どこで、どのように生まれたのか。その謎を、焼きそば食べ歩きブログ「焼きそば名店探訪録」の運営者、塩崎省吾さんが解き明かしていく著書 『ソース焼きそばの謎』から、一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目。前篇を読む


 全国にはお好み焼き・ソース焼きそばの老舗が点在している。それらの老舗の創業年、あるいはいつ頃からソース焼きそばを提供し始めたのかを、私なりに可能な範囲で調べてみた。中でも、昭和20年代から30年代にかけて創業した店や、発祥したご当地焼きそばに着目してみた。いわゆる「日本三大焼きそば」とされている、富士宮やきそば・横手やきそば・上州太田やきそばもこの時代だ。

 その着目した店や焼きそばを、地域ごとに年代も添えて列挙していきたい。それがソース焼きそばの伝播の実態を知る、手がかりになると思うのだ。

 もちろん、名前を遺さないまま消えてしまった店は数知れないし、店舗より屋台の方が先行したり、年代が間違っているケースもあるだろう。しかし、例えば点描画でごく一部に間違えた色を塗っても全体像には違和感がないように、最後に俯瞰すれば一部年代の誤差はあるにせよ、だいたいの流れが見えてくるのではないか。冗長に感じるかもしれないが、我慢強く付き合ってほしい。

 なお、創業年の情報元は、新聞やテレビなどの大手メディア、店自身や商店街などの公式サイト、明らかに店の了承の元で取材をしているウェブサイト、そして私が直接店主に確認したものに限定している。

関東地方:肉を使わないシンプル派が主流

 スタートは関東地方。関東平野の各県には、焼きそば専門店が点在している。北関東一帯、東武鉄道で浅草と繋がっている群馬県と栃木県の両毛地域が特に多く、他地域に先駆けてソース焼きそばが普及した。

2023.09.23(土)
著者=塩崎省吾