はじめて島民だけで搾油した椿油を製造

 そのきっかけは、いつも通りすがりに見ていた椿の林。鮮やかな緑の苔の絨毯に、椿の木が並んでいて、それがなんとも幻想的な風景なんです、と紫寿代さん。そしていつ見ても、キレイに整えられていて、聞くと、その林は島のおじいさんやおばあさんが毎日手入れをしているとのこと。

 この感動的な景色をこの先も見られるように、島の椿産業を受け継ごうと思ったそう。

 今年1月には、島外の業者にたよらず島民だけで搾油した椿油を出荷。丁寧に椿の種を選別することで、雑味のない上質な椿油ができるそう。島の名産品として販売するほか、旅行者や子供たちに向けて椿油の保湿クリーム作り体験も実施しています。

 その美しい椿の林を守っているのが、徳田セツ子さん。御年98歳。今も5時に起床し、午前中は8カ所ある椿の林を回って雑草を抜いたり、竹を切ったり、熊手で落ち葉を集めたりしていると言います。

 「目が悪いから、地面をキレイにしておかないと、収穫の時に椿の種を拾えないからね」。現役で働く薩摩硫黄島のご長寿、たのもしいです。

2023.09.09(土)
文・撮影=古関千恵子