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東京の輪郭がはっきりしてきたように感じる

――自身に対して客観的になれたのは何かきっかけがあったりしたんでしょうか?

 ひとつには上京して2年ぐらい経って、自分自身で生活をしているなという実感が出てきたところです。ある意味大人になったというか。実家にいた時や、上京したてのころは、自分自身を客観視することはもちろん、東京という街もまだきちんと見つめることが出来ていなかった気がします。

 今こうして都会の中に身を置いて生活をすることで、東京の一つひとつの輪郭がはっきりとしてきたというか。情報の渦を外から眺めていただけの自分が、そこの中に飛び込んで面白いものに積極的に触れていくようになりました。

実家は偉大ですね(笑)

――同年代の方とのコラボレーションや積極的なアクションも増えてきているのもそういう影響でしょうか。

 そうですね。生活環が広くなって、実体験に基づく歌詞とか、具体的な作品も自然に増えています。

 そうして久しぶりに実家に帰ると、見え方も変わってくるんです。当たり前なんですけど、実家って自分の好きなものがたくさん置いてあって。改めて、自分はこういうのを見て育ったんだ、やっぱりこういうものが好きなんだって気づかされるんですよ。

 自分の来し方に思いを馳せるというか。幼少の記憶ってやっぱり大事だなと思いました。安堵を覚えるものやふるさと。

――新作アルバムにはそういった幼少期の記憶もかなり盛り込まれている?

 1曲目とかはまさにそうですね。おじいさんとの思い出もそうですが、小さいころ、絵本をよく読んでいて、それで絵本のような曲を作りたいって思って作った曲です。ジャケットのモンチッチ人形も幼少期に好きだったものなんですが、この曲が完成したときにポンって浮かんできて、タイトルもジャケットもそれで行こうって思いました。

――まさに原風景が込められた1枚ですね。

 そういう具体的な思い出もそうなんですが、幼少のころの記憶も大きな要素です。小さいころの時間って凄く長かった。インターネットとかも中学生ぐらいまではなかったし、景色とかをぼんやりと眺めていた。感覚的に立ち上がってくる歌詞や曲っていうのは、そういう原体験から出てきているんじゃないのかなって思うんですよね。

 アルバムに収録されている「スコール」とか「プレデター」ってメモとかも取らずに作っているような感覚的な曲で、自分を構成する要素の中で大きな部分を担っている気がします。

 今回アルバムを振り返ってみて、時折、そういう自分の原初的な部分に立ち返って、また新鮮な気持ちを抱けたらいいなって思いました。今、僕が興味のあることというのも根源的にはそういう要素があると思うし。

 そう考えるとやっぱり実家って偉大ですね(笑)。

崎山蒼志(さきやま・そうし)

2002年8月31日、静岡県出身。’18年、ABEMA『日村がゆく』への出演をきっかけに注目を集める。同年、ファーストアルバム『いつかみた国』、’19年にセカンドアルバム『並む踊り』を発表。’21年1月27日にアルバム『find fuse in youth』でメジャーデビュー。7月19日発売のシングル「燈」はTVアニメ『呪術廻戦』「壊玉・玉祈」のエンディングテーマに採用された。

『i 触れる SAD UFO』

【通常盤】(CDのみ)3,300円。SRCL-12585

<CD>
01.i 触れる SAD UFO 
02.In Your Eyes
03.燈
04.プレデター
05.剥がれてゆく季節に
06.いかれた夜に
07.覚えていたのに
08.I Don’t Wanna Dance In This Squall
09.翳る夏の場
10.Swim
11.太陽よ

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2023.08.12(土)
文=CREA編集部
写真=今井知佑
ヘアメイク=根本亜沙美
スタイリスト=藤井希恵(THYMON Inc.)