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 四十数回の工程と2カ月以上の日数を費やして作られる「バカていねいさ」から、「津軽のバカ塗り」の異名を持つ青森の伝統工芸・津軽塗。映画『バカ塗りの娘』で、津軽塗職人を目指す娘を演じた堀田真由さんに、津軽塗と映画の魅力をお聞きしました。インタビュー【後篇】を読む


――映画『バカ塗りの娘』のタイトルは、とてもインパクトがあります。はじめにオファーを受けた時はどう思いましたか?

堀田 「津軽塗」はもちろん知っていましたが、津軽塗のことを「バカ塗り」と呼ぶことは知らなかったので、かなり驚きました。

 でも台本を読んで、塗っては研いで、塗っては研いでという大変手間のかかる技法で津軽塗がつくられていることを知り、その「バカていねいさ」から「バカ塗り」と呼ばれているという名前の由来がわかると、すごく納得しました。そして、日本が世界に誇る青森の伝統工芸・津軽塗の世界にぜひかかわってみたいと、前向きな気持ちでお受けしました。

――もともと、日本の伝統芸能に興味はおありだったのですか?

堀田 そうですね、わりと身近な存在だったように思います。

 というのも、私は滋賀県出身で、地元で毎年行われるお祭りを見て育ったんです。お祭りのハイライトは、小学生が豪華絢爛な山車の舞台で踊る「子ども歌舞伎」です。そこで同級生が踊っているのを見て感想文を書く、という授業もあったくらい、伝統文化は身近なものでしたね。

――漆のお椀など、伝統工芸品も身近な存在だったのでしょうか。

堀田 日常的に使うということではないのですが、お盆やお正月に祖母の家に行くと漆塗りの重箱や食器が出てきたので、「特別な行事の時に使う特別な器」というイメージがあります。

――今回堀田さんが演じたのは、漆塗り職人を目指す青木美也子という女性です。伝統工芸の職人を演じることには、どのような難しさがありましたか?

2023.08.30(水)
文=相澤洋美
撮影=杉山拓也
スタイリスト=小林 新(UM)
ヘアメイク=小笹 博美