天皇皇后が6月9日、結婚30年を迎えた。そして「天皇皇后両陛下ご結婚満30年に際しての両陛下のご感想」を公表し、そのなかでは、「二人で多くのことを経験し、互いに助け合い」過ごしてきたことなどを述べつつ、「国民の皆様より寄せていただいている温かいお気持ちに対して、改めて感謝の気持ち」を表明している。

 東京の日本橋高島屋では、「御即位5年・御成婚30年記念 特別展 新しい時代とともに ――天皇皇后両陛下の歩み」という、これまでの数多くの場面での写真や即位などを含めて儀式などで着用したもの、そして「御成婚パレード」で使用されたロールスロイスなどの展示(主催・毎日新聞社、特別協力・宮内庁侍従職)が5月17日から6月6日まで開催されていた。私も見に行ったが、平日の午後にもかかわらず、多くの人が来場し、年輩の人々だけではなく若い世代も数多くいたのが印象的であった。

公務の時期がやや限定的だった背景

 とはいえ、その展示で気になったことがある。様々な写真が展示されていたが、海外訪問などを含めた公務の時期がやや限定的であったことである。それは、雅子皇后の療養の問題が根底にはある。

 幼いころからアメリカなどで過ごした小和田雅子さんは、皇室に国際化の新しい風を吹き込むと期待された。しかも、ハーバード大学卒業・外務省勤務という雅子さんのキャリアは、男女雇用機会均等法を体現していると見られた。女性が積極的に仕事をこなし社会で活躍するモデルととらえられたのである。結婚後のいわゆる「皇室外交」の展開は、雅子妃のキャリアを活かすものとして人々も受容していった。

 

 ところが、皇太子妃である雅子妃の産む子どもは将来の天皇になる可能性があることから、メディアはいわゆる「世継ぎ問題」も積極的に報道していった。それは、女性の役割は子どもを産むこととするような古い価値観に起因していたように思われる。つまり、キャリアを活かして仕事を担うことと子どもを産んで家を継続させていくこととの両立がかなり難しいことが予感された。

2023.06.23(金)
文=河西秀哉