#275 Kuchinoerabu-jima
口永良部島(鹿児島県)

 ヤシ並木の背後に、暗灰色の噴煙が空を埋めるようにもうもうと立ち上る爆発的噴火をテレビ画面で見た時、衝撃とともに口永良部島の名前をはじめて知りました。

 それは2015年5月のこと、全国ではじめての噴火警戒レベル5(避難)が口永良部島に発令された日です。

 口永良部島は正直、遠いです。

 まずは、そもそも遠い屋久島へ渡り、さらに屋久島の宮之浦港から1日1便のフェリーで約1時間40分。移動中、船内アナウンスで、もしもの噴火時についての案内が流れた時、はじめて口永良部島を訪れるわたしは少しぴりっと緊張しました。

 屋久島の北西約12キロに浮かぶ口永良部島。大小2つの島が合体したような形で、周囲約50キロ。東京都の葛飾区ほどの面積の島に約100人が暮らしています。

 たどりついた口永良部島は、大きいほうの島の中央にある新岳からちょろちょろっと煙が立ち上っていました。生きている火山島です。今も活動中のため、新岳の山頂付近の立ち入り禁止と半径2キロ圏内にある道路の通行が禁止されています。

 島には4つの集落からなる2つの地区があります。本村、前田、田代の3つの集落が本村地区、そして車で約40分離れた湯向(ゆむぎ)が湯向地区。

2023.06.03(土)
文・撮影=古関千恵子