兵庫県尼崎市で、あんこ好きには見逃せない、貴重なあんこ専門店を見つけました。場所は阪急神戸線塚口駅と武庫之荘駅の中間あたり。各々の駅から歩くこと約15分、七松線沿いにある『あんこ専門店 櫻や』です。オープンは2022年5月16日。

 阪神間モダニズムを彷彿とさせるクラシカルな意匠のお店に入ると、あんこを炊く甘い香り。アンティークのどっしりとしたボードの上には、瓶入りのあんこやあんバター、あんこを使った色々なお菓子が並んでいます。

 オリジナルのあんこのお菓子をご紹介しましょう。

 「あんこぼれ」は、おはぎのアレンジ。いわゆる半殺しにしたもち米を丸めずにパックに入れ、その上に、たっぷりのあんこときな粉をまぶしています。丸い形にしていないので、あんこだけを食べたり、きな粉とあんこを好きな割合でもち米に付けたりできるのが面白い。あんこの量もネーミングどおりこぼれんばかり。1パック食べるとお腹いっぱい、大満足です。

 「お花おはぎ」は、カップにあんこともち米が入っていて、上には、あんこを色付けして絞ったバラの花。食べてしまうのが惜しいほど綺麗で愛らしい。

 「あんPOP」は、注文があってから、生地にあんこと生クリームを詰めます。シュー生地ではなく、アメリカ発祥のデニッシュの一種といわれるポップオーバー生地をカットし、あんこを溢れんばかりに詰めて、さらに生クリームをたっぷり絞る。大きく口を開けてかぶりつくと、甘くてまろやかで絶妙な味わい。

 おやつにぴったりのあんこのお菓子は、日替わりで登場。何があるかは、その日のお楽しみ。白いあんパンや塩豆大福、あんバターバーガー……。ど全部食べてみたくなります。そして、どれもが日本茶をはじめコーヒーや紅茶にもよく合います。

 あんこのお菓子を作っているのは、佐々木敏子さん。

 「全国各地であんこの炊き方を教え、広め、さすらいのあんこ職人と呼ばれる小幡寿康さん直々に習いました。師匠が伝えるあんは、小豆本来のうまみが感じられ、風味がとても良いのが特徴」と佐々木さんはにっこり。「2年余り前に初めて師匠に会いに行ってから何度も訪ね、1年くらいかけてあんこの炊き方を習得。厳選された素材で、全て手で炊き上げています」

 佐々木さんは、山口県下関市出身。父方の曽祖父が営んでいた『さくらや旅館』には、放浪の俳人として知られる種田山頭火が100日滞在。周辺の山や湯を気に入って、ここを永住の地にしたいと願い、曾祖父と夜毎酒を酌み交わしたのだそう。住人の反対にあって山頭火が去った後、曾祖父は、旅館の屋号を『山頭火』に。佐々木さんの父親が元の屋号を受け継いで、和菓子屋・桜屋が誕生したといいます。

 和菓子屋で育ち、小さい頃からあんこのお菓子が大好きだった佐々木さん。ご主人の転勤で阪神間に住んで子育てをしながら、「父親が亡くなって和菓子屋が閉店た後も、いつか屋号を受け継いで、あんこのお菓子屋をやりたいと思っていた」と言います。

 小幡寿康さん直伝、瓶入りの「あん」「あん&バター」は、欠かせない商品。これがお目当てというファンも多い。

 「あん」は、スプーンですくうと、ふっくらした小豆の粒がキラキラ輝いて見えます。口にすると小豆の風味とホッとするような砂糖の甘み。上品な味わいです。ロールパンに挟んだり、ホットケーキやトーストにトッピングしたり。水を加えて、ぜんざいにもできます。

 たっぷりのバターを使った「あん&バター」は、トーストにトッピングすると、バターが溶けてコクのあるおいしさになります。焼いたお餅との相性も抜群。

 「師匠のあんこにさらに手を加えて、父親が作っていたお菓子を再現しました」と佐々木さん。

 その「神戸ゴルフ最中」は、まさにゴルフボールサイズの最中の皮と、あんこがセットになっていて、食べる直前にあんこを皮に詰めるスタイル。パリパリした食感の最中の皮と、ほんのり甘いあんこが一体となって、とてもおいしい。日本茶はもちろん、コーヒーもよく合います。

 「来店してくださった女性客には、体に良いといわれる小豆の煮汁を飲んでもらうこともあるんですよ」。接客も大好きだと言う佐々木さん。デパートやイベントの催事にも積極的に出店。あんこ好きの注目を集めています。

 お菓子作りが好きで、有名な京都のケーキ教室や、あちこちのお菓子教室にも通っていたという佐々木さんゆえ、あんこのアレンジは、それこそ無限大。これから、もっともっとたくさんのあんこのお菓子が登場するでしょう。楽しみです。

あんこ専門店 櫻や

所在地 兵庫県尼崎市富松町2-31-1
電話番号 050-3701-7061
Instagram:@sakuraya078

Column

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2023.05.14(日)
文・撮影=そおだよおこ